砂漠で遭難!「多数決」が命取りに? 生き残るための最強チーム術(コンセンサスゲーム)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
もし、あなたが灼熱の(しゃくねつ)の砂漠で遭難してしまったら? 持っている水は残りわずか…。仲間たちと生き残るために、あなたならどうしますか?こんなドキッとする究極の状況設定で、生きるために必要な「大切なこと」を学べるゲームがあります。
「地理おた部」というホームページでで公開されている【グループワーク】砂漠で遭難したら!? コンセンサスゲーム

先日、このゲームを道徳の時間に行いました。活動内容はとてもシンプルですが、非常に奥深く、多くの学びがあるゲームです。
多数決より優れた「集団の力」とは?
このゲームの最大のキモは、「多数決を使わない」というルールにあります。
多数決は、素早く結論を出せる便利な方法です。しかし、もし「間違った意見」に多くの人が投票してしまったら、どうなるでしょう? この砂漠のゲームでは、それが「全員の死」に直結しかねません。
そこで重要になるのが、「合意形成(コンセンサス)」です。 合意形成は時間がかかりますが、メンバー全員の知識や視点を集めることができます。「あのアイテムは日よけになる」「いや、こっちのアイテムは夜の寒さをしのげる」といった多様な意見をすり合わせることで、一人ではたどり着けない、より生存率の高い「最適解」を導き出すことができます。
このゲームでは、こうした集団の力を引き出すスキルを体験できます。コミュニケーションスキルや協調性はもちろん、意見を一致させることの難しさ、そして最終的な「決断力」の大切さを学ぶことができるのです。
科学的に考える「待つ」か「動く」か
ゲームには、運命を左右する大きな分かれ道があります。 それは、「助けを待つ」のか、それとも「自分たちで居住地に向かう」のかという究極の決断です。ここが、まさに科学的な思考が試されるポイントです。 サバイバルの世界には、「S.T.O.P.(ストップ)」という原則があります。これは「Stop(止まれ)」「Think(考えろ)」「Observe(観察しろ)」「Plan(計画しろ)」の頭文字です。
パニックになって闇雲に動くと、あっという間に体力を消耗し、体から貴重な水分が失われていきます。また、救助隊が捜索する範囲も広がってしまい、発見が難しくなります。
多くの場合、「その場に留まり、救助隊に見つけてもらう工夫をする」(鏡で光を反射させる、煙を上げる、目立つ印を作るなど)のが、科学的に最も生存率が高い選択と言われています。
もちろん、この決断によって持っていくアイテムの優先順位も全く異なってきます。「動く」なら水や方位磁石が最優先でしょう。「待つ」なら、日よけや目印になるパラシュート、光を反射させる鏡の価値が格段に上がります。
「正解」を知るスリルと学び
このゲームの面白いところは、単なるディスカッションで終わらない点です。 ちゃんと「専門家による解答(模範解答)」が用意されています。自分たちのグループが出した結論が、生存のプロの視点とどれだけ近かったのか、あるいは遠かったのか。その答え合わせの瞬間は、まるでクイズ番組のようで、クラスで一番の盛り上がりを見せます。
「なぜこのアイテムが重要なのか」という科学的な理由を知ることで、単なるゲームが、現実に役立つ「知恵」に変わる瞬間です。
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