サクサクの秘密は「脱水」にあり?揚げ物の科学と禁断の水

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

キッチンから聞こえてくる「パチパチ」という心地よい音と、食欲をそそる香ばしい匂い。揚げたてのから揚げや天ぷらがサクサクでおいしいのは、実は鍋の中で驚くような「科学の入れ替わり劇」が起きているからなんです。今回は、身近な料理の中に隠された「温度」と「密度」の不思議な関係を紐解いていきましょう。おいしさの秘密を知ると、キッチンがもっと刺激的な実験室に見えてくるはずです!

100度の壁を突破する「油」のパワー

水はどれだけ火を強めても、ふつうの環境では100度までしか上がりません。しかし、揚げ物で使うサラダ油などの植物油は、沸点が非常に高く、180度から200度といった高温で食材を加熱することができます。この「100度を超える」というのが最大のポイント。高温で一気に加熱することで、食材の表面を瞬時に固め、旨味を閉じ込めることができるのです。

同じような仕組みとして圧力鍋があります。圧力をかけることによって、水なのに温度が100度を超えても水蒸気にならないので、早く料理ができるという仕組みですね。圧力鍋についてはこちらをご覧ください。

圧力鍋はなぜ時短なの?「沸騰」の科学(バーミキュラ)

ちなみに、サラダ油の沸点は理論上は300度から500度ほどと言われていますが、実はそこまで温度が上がる前に、油は別の変化を起こし始めます。

サクサクの正体は「水と油の交代劇」

揚げ物をしているとき、たくさんの泡が出てきますよね。あの泡の正体は、食材の中に含まれていた「水分」が蒸発した水蒸気です。

高温の油に食材を入れると、中の水が一気に外へ逃げ出します。そして、水が抜けて「空き家」になった隙間に、今度は熱い油がスッと入り込みます。この「水分が抜けて油が入り込む」というプロセスこそが、あのサクサク、クリスピーな食感を生み出しているのです。ただ焼くのとは違う、揚げ物ならではの美味しさの秘密がここにあります。

油は沸騰する前に「燃え上がる」?

ここで少し怖いお話もしておかなければなりません。水は沸騰すると盛んに泡を出して蒸発しますが、油は沸騰するよりも先に「発火点」を迎えてしまうことがあります。つまり、油がグツグツ煮え立つよりも先に、火がついて燃え上がってしまうのです。これが「天ぷら油火災」の正体です。油は沸点が高いからこそ、私たちの想像以上に高いエネルギーを溜め込んでしまう性質があるのですね。こちらの動画をご覧ください。

もし油に火がついてしまったら、絶対に水をかけてはいけません。そこには「密度」「体積変化」の科学が関係しています。

  • 密度: 水は油よりも密度が大きいため、油に注ぐと一瞬で油の下にもぐり込みます
  • 体積変化: 下に潜り込んだ水は、200度以上の熱い油に触れて一瞬で沸騰し、水蒸気に変わります。水が水蒸気になると、その体積はなんと約1700倍に膨れ上がります。

この爆発的な膨張によって、燃えている油が周囲に一気に撒き散らされ、火柱が上がる大惨事になってしまうのです。油で火災が起きた時は、落ち着いてシーツで覆うか、専用の消火器を使うことがいかに大切かがわかりますね。

おいしい揚げ物の裏側には、常にこうした激しいエネルギーのやり取りがあります。次にサクサクの天ぷらを食べるときは、ぜひ鍋の中で起きた「水と油の交代劇」に思いを馳せてみてください!

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