ドライアイスで「見える空気砲」!牛乳パックでできる!~煙のリングが部屋を舞う~
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「空気砲」と聞いて、多くの人は「なんとなく空気を飛ばすもの」というイメージかもしれません。でも、もしその見えない空気が、まるで煙のリングのように目に見えるようになったらどうでしょう? とっても不思議で驚く現象なんですよ。今回は、空気の流れを可視化する実験として最適な「ドライアイスを使った空気砲」の授業アイデアをご紹介します。
牛乳パックとドライアイスという身近な素材を使って、まるで忍者のように現れる煙のリングを作り出すという、シンプルながらも生徒の食いつき抜群な教材です。「なぜ輪っかになるの?」「どうして飛んでいくの?」と、自然と物理への探求心が湧いてくるこの実験は、準備も簡単で、理科室でも教室でも実施できます。
なぜ“見える”空気砲なのか?
ダンボールで作る空気砲は有名ですが、空気の動きは目には見えないため、紙コップを倒すなど、反応を通してしかその存在を理解できません。そこで、ドライアイスの煙を使うことで、空気の流れ自体を視覚化します。この「見える化」によって、**空気のかたまり(渦輪)**がどのように飛び、そしてどんなふうに消えていくのかを観察でき、理解が格段に深まるのです。
実は、この「渦輪(かりん)」という空気の塊は、私たちの身近なところにもたくさん存在しています。たとえば、火山が噴火したときにできるドーナツ型の噴煙や、タバコの煙、そして大きなリングを空に描くスモークマシンも、この渦輪の原理を使っています。空気の流れを目に見える形にすることで、普段見過ごしている空気の力や、流体の性質に気づくきっかけになります。
授業準備と実験の手順
【準備物】
牛乳パック(1Lタイプがおすすめ)
ドライアイス(1kgで1000円以下。氷屋さんやスーパーで入手可)
水槽や透明なケース(深さ20〜30cm程度)
お湯(約40℃)
カッター、はさみ
軍手 or トング(ドライアイスの取り扱い用)
【事前準備】
ドライアイスは購入後、できるだけ早く使用しましょう。
氷屋さんによっては予約が必要な場合があるので、事前に問い合わせを。
作り方・実験手順
① 牛乳パックの加工
→ 上部を開け、底に直径4〜5cmの丸い穴を開けます。
② 煙の生成装置を準備
→ 水槽に40℃程度のお湯を入れ、ドライアイスを少量入れます。
→ モクモクと白い煙(気化した二酸化炭素と水蒸気の混合物)が出てきます。
③ 牛乳パックを設置
→ パックの切り口を下、穴を上に向けて水槽の上にかぶせ、煙が中にたまるようにします。
④ 空気砲発射!
→ パックの側面を軽くトントンとたたくと、煙のリングが飛び出します!
空気砲の原理(空気のかたまりが穴を通って前方へ進む)を「見える現象」として理解できる点が最大のポイントです。煙のリングの形や大きさ、飛距離などに注目してみましょう。「なぜリングになるのか?」という疑問から、渦の構造や流体の性質に自然と踏み込んでいけます。グループでリングの安定性を競わせるなど、探究的な展開にもつなげられます。
展開例・応用
発展的な問い:
「リングはなぜ途中で消えるのでしょうか?」
「飛距離に影響する要素は?」
比較実験:
丸い穴ではなく、四角にしたらどうなる?
穴の大きさを変えたら?
煙の種類を変えたら?
生活とのつながり:
火山の噴煙、タバコの煙、飛行機雲、スモークマシンなどとの関連づけ。
空気は**“透明”だけど、目には見えない“力”**があります。その力を視覚化できるこの実験は、物理に苦手意識を持つ生徒にも効果抜群です。教室に浮かぶふわっとした煙の輪。その美しさと不思議さが、理科の魅力を一瞬で伝えてくれます。
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