【科学監修】科学は筋書きのないドラマだ!チョコプラと僕青を驚かせた「静電気ビリビリ大作戦」の裏話「坂道の向こうには青空が広がっていた。」

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

テレビ番組の収録現場、キラキラしたアイドルの笑顔と、一触即発の緊張感が漂う静電気。一見、交わることのない二つの世界が交差する時、何が起こるのでしょうか?実は先日、そんなワクワクする現場の科学監修を担当しました。真冬の乾燥した日にドアノブで「バチッ!」とくる、あの静電気を、アイドルの握手会で再現するという、ちょっぴりドキドキな企画の裏側をお話しします。

アイドルの握手会で静電気!?壮大な実験計画

1月30日に放送された、「坂道の向こうには青空が広がっていた。」という番組の科学監修を行いました。深夜の放送にもかかわらず、予告編を見て声をかけてくれた方もいて、とても嬉しかったです。この番組は、アイドルグループ「僕の見たかった青空」(僕青)の皆さんと、お笑いコンビ「チョコレートプラネット」さんが共演するとても楽しい番組です。

https://www.fujitv.co.jp/sakamichinomukou/

さて、今回のミッションは「握手をした瞬間に、安全に静電気を流す」こと。
この「安全に」というのが科学監修の腕の見せ所です。静電気と聞くと少し怖いイメージがあるかもしれませんが、適切な知識と準備があれば、安全に楽しむことができる科学現象なのです。

今回の主役は、電気を溜めることができる装置「ライデン瓶」。18世紀に発明された、いわば電気の貯金箱のようなものです。このライデン瓶で発生させた静電気を、人の体を通して流します。

計画はこうです。
まず、絶縁体(電気が通りにくい素材)の板の上に靴を脱いで乗ってもらい、体に電気を溜めやすい状態にします。そして、片方の人がライデン瓶に触れて電気を体にチャージ。準備が整ったところで、もう片方の人と握手をすると…。

このように、二人の間を電気が「バチッ!」と流れるはずでした。もちろん、事前に何度もテストを行い、うまくいくことは確認済み。あとは本番を待つだけです。モニターの前で、固唾をのんで見守ります。

まさかの失敗!テレビの裏側で緊急出動

そして迎えた本番。なんと、実験は失敗してしまいました。握手をしても、電気が流れません。

スタジオの空気も一瞬凍りつき、モニターを見ていた僕の心臓はキュッと縮みました。科学実験では、スタジオの湿度や人の服装、わずかな条件の違いが結果を大きく左右することがあります。頭の中では、失敗の原因がものすごい速さで駆け巡ります。本来は安全管理として裏方にいる予定でしたが、急遽スタジオに呼ばれることに!テロップには「稲妻ハカセ」と表示され、内心かなり焦りながらも、冷静を装って登場しました。

リベンジ成功!科学の鉄則は「シンプル・イズ・ベスト」

失敗は許されません。そこで、成功率100%を目指すための作戦変更です。最初の計画では、足元の板から体全体を通して電気を流すという、少し複雑な経路をたどっていました。しかし、経路が長いと、電気が途中で逃げてしまう(放電してしまう)リスクも高まります。そこで、電気の通り道を極限までシンプルにする方法に切り替えました。

それがこちら。ライデン瓶を直接手に持ってもらうのです。

こうすることで、電気の通り道は「ライデン瓶 → 腕 → 相手の腕」と非常に短く、確実になります。いわば、電気の迷子を防ぐ作戦です。そして、運命の再挑戦。結果は…

見事、大成功!スタジオが歓声に包まれ、僕も心の底からホッとしました。

テレビ番組の華やかな実験の裏側では、このようなハプニングや試行錯誤が常にあります。100%の成功を求められるプレッシャーの中で、科学の知識と経験を総動員して最適な方法を導き出す。急な出番で髭も剃れず、焦った顔での出演となってしまいましたが、科学の面白さと難しさを改めて実感した、忘れられない一日となりました。

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