指示ほぼゼロで生徒が動いた!オームの法則を”探究型”に変えた3時間の記録
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「先生が指示を出さなくても、生徒が真剣に実験に取り組んでいる」——そんな授業、想像できますか?実は、実験の設計をちょっと変えるだけで、教室の空気がガラリと変わります。今回は、長年の悩みだったオームの法則の実験を”探究型”にリニューアルした記録をお届けします。
オームの法則の実験は以前はとても指示が多く、こちらの記事を見てもわかるように、生徒の様子を見ていると探究をしているというよりも、教師の指示に従って動いているという感じがしていました。
回路を組む段階で手こずる生徒が意外と多く、前回の授業で回路接続の練習をしたにもかかわらず、機器の操作についての経験がもう少し必要だと痛感しました。また電源装置もくせものです。20Vまで出てしまうという危険性があるため、教師も慎重に使い方を指示しなければなりません。豆電球から抵抗器に変わる点も「なぜ?」となりやすいポイントです。そのため、どうしても実験をレシピ通りに進める流れになってしまう——これが長年の悩みでした。
そこで今回は、乾電池から電源装置への切り替え・豆電球から抵抗器への切り替えをより早い段階に持ってきたうえ、電流計と電圧計をデジタルに変えて、「装置での困り感」を減らすとどうなるかを検証しました。
この実験に至るまでの道のり(全8時間)
この実験は、次の授業の流れを経てたどり着いたものです。

- 鉛筆回路 1時間目
- 回路図の描き方 2時間目
- 電流計の使い方 3時間目
- 豆電球の前後の電流はどうなるか? 4時間目
- 電流の規則性 直列回路・並列回路 5時間目
- アナログからデジタル電圧計へ 6時間目
- 電圧の規則性 直列回路・並列回路 7時間目
- モデルを作ってみよう!電流と電圧 8時間目
そして、オームの法則の実験には3時間を確保しました。
オームの法則1時間目:実験計画を立てる
まず1時間目は、実験計画の立案に丸ごと使いました。生徒に与えた学習課題はシンプルなひと言です。
「抵抗器に流れる電流と電圧には、どのような関係があるのだろうか?」
まず仮説をサッと立てさせました。「グラフをざっくり描いてみる」という程度のものです。生徒のグラフを見ると、多くは比例関係を予想していましたが、横軸が電流だったり電圧だったりとバラバラ。中には「電圧をかけると電流がだんだん小さくなって一定値に近づく」という、コンデンサーや非線形素子を連想させる面白い予想をした生徒もいました。教師はここでまとめようとはせず、全体に共有するにとどめました。
その後、実験計画をじっくり練る時間を取りました。意識させたのは「実験時間は20分」という制約。また、抵抗器といってもセメント抵抗からジュール熱実験で使うばね状のものまで様々あることを実物を見せながら紹介しました。
生徒はほぼ白紙の用紙に自分たちの実験計画を書いていきます。複数の抵抗器を使って比較する班、0.1V刻みで細かくデータを集めようとする班など、班によって個性豊かな計画が生まれました。
オームの法則2時間目:いよいよ実験本番
2時間目はいよいよ実験の日です。まず前回の目的を全体で再確認しました。
「抵抗器に流れる電流と電圧には、どのような関係があるのだろうか?」
20分間で実験を行い、その後10分でグラフを描き、考察を書いたり他の班の結果を見に行ったりする時間を設けました。実験中の生徒の様子を見ていると、私はほとんど指示を出していないのに、全員が真剣そのもので課題に向き合っていました。「教師が介入しすぎると、生徒の探究心を損なう」——そのことを改めて実感した瞬間でした。
生徒の考察から生まれた、素晴らしい発見
考察では、多くの生徒が「電流と電圧には比例関係が見られる」という結論をまとめました。従来の授業と変わらない結論のように見えますが、注目すべき記述もありました。ある生徒はこう書いていました。
「同じ抵抗器を使うと、電流と電圧には比例関係が見られる。」
「同じ抵抗器を使うと」——この一言に気づきが凝縮されています。これは「抵抗値」というもう一つの物理量の存在への気づきであり、オームの法則の本質に自力で迫った瞬間です。教師が教え込んだのではなく、実験を通じて生徒自身がたどり着いた発見だからこそ、価値があります。次回はクラス全体で結果を共有し、どのような考察が見られたかをみんなで検討していきます。探究はまだまだ続きます!
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・運営者・桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!
6月のイチオシ実験!
レモンやオレンジで風船を割ろう!インパクトが抜群のリモネン風船の実験

テレビ番組監修・イベント等のお知らせ
- 6月3日(水)20:30〜 「
バカリズムのちょっとバカりハカってみた!」(テレビ東京)を科学監修・出演します。テーマは「 そばの出前は何人前まで運べるのか、限界を測ってみた」です。 - 6月4日(木) 7:00〜 「THE突破ファイル」(日本テレビ)について科学監修しました。
- 6月14日(日) 千葉大学インスタレーション「探究」にて講師を務めます
- 6月26日(金) 公開研究会「脱作業化!デジタル化と段階的指導で実現する オームの法則の探究」
- 6月28日(日) ダビンチマスターズ@昭和女子
- 7月18日(土) 教員向け実験講習会「ナリカカサイエンスアカデミー」の講師をします。お会いしましょう。
書籍のお知らせ
- 『大人のための高校物理復習帳』(講談社)…一般向けに日常の物理について公式を元に紐解きました。特設サイトでは実験を多数紹介しています。※増刷がかかり6刷となりました(2026/02/01)

- 『きめる!共通テスト 物理基礎 改訂版』(学研)… 高校物理の参考書です。イラストを多くしてイメージが持てるように描きました。授業についていけない、物理が苦手、そんな生徒におすすめです。特設サイトはこちら。

各種SNS(更新情報をお届け!)
X(Twitter)/instagram/Facebook(日本語)
Explore
- 楽しい実験…お子さんと一緒に夢中になれるイチオシの科学実験を多数紹介しています。また、高校物理の理解を深めるための動画教材も用意しました。
- 理科の教材… 理科教師をバックアップ!授業の質を高め、準備を効率化するための選りすぐりの教材を紹介しています。
- Youtube…科学実験等の動画を配信しています。
- 科学ラジオ …科学トピックをほぼ毎日配信中!AI技術を駆使して作成した「耳で楽しむ科学」をお届けします。
- 講演 …全国各地で実験講習会・サイエンスショー等を行っています。
- About …「科学のネタ帳」のコンセプトや、運営者である桑子研のプロフィール・想いをまとめています。
- お問い合わせ …実験教室のご依頼、執筆・講演の相談、科学監修等はこちらのフォームからお寄せください。

