道具を新しくしたことによる注意点!直列並列の回路実験で考えたい『測定の落とし穴』(電流の規則性)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
デジタル電流計で電流を測ったら、予想外のことが起きた話
「デジタルにすれば、もっと正確に測れるはずだ」
そう思っていた実験が、思わぬ落とし穴を教えてくれました。道具を新しくするだけでは、うまくいかない。そこに、理科の実験の深さがあります。今回は、電流の規則性を調べる実験で起きたリアルな失敗と、そこから見えてきた大切な気づきをお伝えします。
今回の実験のねらい(電気回路5時間目)
電流の大きさを測定する実験を行いました。前回までに、豆電球を抵抗器に、電源装置をミニ電源装置(プチX)に、
電源装置 Petit-X(プチエックス)

またアナログ電流計をデジタル電流計(プチメーター)へと変更を加えてきました。
- 鉛筆回路 1時間目
- 回路図の描き方 2時間目
- 電流計の使い方 3時間目
- 豆電球の前後の電流はどうなるか? 4時間目
今回はいよいよ本題です。直列回路と並列回路において、電流はどのように流れているのか、どんな規則性があるのかを確かめる実験を行いました。
実験前の生徒の仮説
実験前に生徒たちに仮説を聞いたところ、面白い意見が出てきました。直列回路については、「どこを測っても電流の大きさは変わらないのでは」という意見と、「抵抗器を通るたびに電流が減っていくのでは」という仮説の2つが出ました。並列回路については、「各抵抗に流れる電流の和が、全体を流れる電流と同じになっているのでは」という意見が出ました。さて、実際はどうなっているのでしょうか。
実験の結果
実験では、10オームと20オームの抵抗器を使い、電源装置の電圧は3Vに設定しました。結果を見てみると、規則性がきれいに見えている班もあれば、まったく見えていない班もあり、大きなばらつきが生まれてしまいました。同じ実験をしているのに、なぜここまで差が出るのでしょうか。これがとても気になりました。
こちらが生徒が行った実験の結果です。


ちなみに、直列回路の正しい答えは「どこを測っても電流は同じ」、並列回路は「各抵抗に流れる電流の和=全体の電流」です。生徒たちの仮説はなかなか鋭かったわけですね。
デジタルだからこそ生まれた「新しい難しさ」
デジタル電流計に変えたことで、ちょっとした電流の差がはっきりと数字に出るようになりました。これは良いことのように思えますが、じつはわずかな違いが「誤差なのか、規則性としての違いなのか」が判断しにくくなるという新しい難しさも生み出していました。
アナログ計器なら、針のブレとして「だいたいこのくらい」と読み取れていた微妙な差が、デジタルだと「0.02A」「0.03A」とはっきり表示されてしまいます。数字が正確に見えるぶん、かえって混乱を生みやすいのです。
そこで自分でも実験をしてみたところ、重要な発見がありました。多くの生徒がとっていたやり方は、「回路に組み込んだ導線を取り払って、その代わりにデジタル電流計を入れる」というものでした。一見合理的に見えますが、じつはこれが問題の原因でした。

この電流を図るときに、導線を取り払って、ミニ電流計を入れていました。

導線の中には、わずかながら抵抗値が高いものがあります。それを取り払ってしまうと、回路全体の抵抗のバランスが変わり、直列回路なのに測定箇所によって電流の値が変化してしまうのです。並列回路では導線の数が多いぶん、この影響がより顕著に出ます。では、どうすればよいかというと、導線を取り払わずに回路をそのまま組み立てた状態で、その導線の途中にデジタル電流計を割り込ませるようにして測定します。

これだけで、規則性がきれいに見えるようになりました。例えばこちらが直列回路の場合です。 
並列回路の場合です。上の枠が、導線を取らずに、電流を滑り込ませた場合、下が導線をとっぱらって電流計を入れた場合。ずいぶん数字が変わってくることがわかります。

もう一つの失敗:電流計を2個配ってしまった
さらに、各班にデジタル電流計を2個ずつ配ってしまったことも、結果のばらつきにつながりました。2個あると、生徒は「2か所を同時に測ろう」とします。すると、2つの電流計のわずかな個体差や、回路への組み込み方の違いが結果に影響してきます。1個だけ配って、場所を変えながら順番に測定させるほうが、規則性を正確につかむには適切でした。
「道具を変える」とは「指示も変える」こと
今回の実験を通じて、あらためて実感したことがあります。それは、道具をアナログからデジタルに替えることは、単なる「アップグレード」ではないということです。道具が変われば、操作の注意点も変わり、生徒への指示の出し方も変える必要があります。デジタル電流計は正確で便利な反面、使い方を間違えると誤差が大きくなるという特性があります。それを踏まえた実験設計と声かけが、教師側には求められます。
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