導線をはずしたら失敗だった!電流計の正しい使い方と電圧の不思議(電気回路の測定における注意点・電圧計の使い方)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「測っているつもりなのに、じつは正確に測れていなかった」
理科の実験には、こんな見えないトラップが潜んでいます。今回の授業では、そのトラップを一つひとつ丁寧に解きほぐしながら、電流と電圧の本質に迫りました。
前回の振り返り:直列と並列、電流の規則性をつかめたか?
前回の実験をもとに、生徒たちに考察を聞いてみました。直列回路ではどこでも電流の大きさは等しいという結論には、多くの生徒が自力でたどり着いていました。ところが並列回路では、話が少し複雑になります。「枝分かれ前の電流の大きさ」と「枝分かれ後のそれぞれの電流を合わせた大きさ」が等しくなる、という考察をまとめられたのは、クラスの約6割でした。
なぜ残りの4割は正しく測れなかったのでしょうか?ここに、今回の授業の核心があります。
電流計の「落とし穴」:導線と取り替えてはいけない理由
デジタル電流計はアナログよりも精密に値を読み取れるため、わずかなズレも数字にはっきり現れます。並列回路で正確に測れなかった班の多くは、測りたい導線をいったん外して、そこに電流計を差し込んでいたのです。

例えば赤い点の電流を測りたいときに、AとBの2つの方法があります。

じつはこれ、見た目はそれらしいのですが、科学的には大きな問題があります。導線にも電気抵抗(電流の流れにくさ)がわずかにあります。導線を取り除いた瞬間、回路の抵抗が変わり、流れる電流の量も変化してしまうのです。本来測りたかった状態とは、もう別の回路になっていたわけです。生徒はもちろんその理由はこの時点ではわかりませんが、導線をとってしまうことが回路に影響を与えるということは伝えておきたかったので伝えました。正確に測れるのはBですね。
そこで今回はもう一度実験をやり直しました。今度は導線を回路につないだまま、電流計を「割り込ませる」形で接続します。回路はそのまま、電流計だけをそっと仲間に加えるイメージです。この方法に変えただけで、並列回路でも正確な値を測ることができるとわかりました。

さらに今回気づいたことがもう一つ。接続部分を軽く握って密着させるだけで、電流の値が変わることがあります。接触の善し悪しが回路全体の抵抗に影響するためです。「どうすれば正確に測れるか」を考えることが、すでに本格的な科学の思考になっています。
電圧とは何か?――「電池目線」と「抵抗器目線」で考えてみよう
次は電圧の話です。電圧は、立場によって意味がちょっと違って見えます。
電池にとっての電圧は、電流を押し流す「勢い」の大きさです。電圧が高いほど、電流を力強く送り出せます。一方、抵抗器にとっての電圧は、そこで電気エネルギーをどれだけ消費しているかを示す量です。電圧がかかっているということは、エネルギーが使われているということでもあります。
中学校の段階では、電流も電圧も「完全に正確な定義」を学ぶのは難しいのですが、この二つの「目線」を持つことで、ぐっと理解しやすくなります。
電圧計もアナログで使い方のみ説明をして、実験ではデジタルに交換しました。(プチメーター(ナリカ))

まず、電圧計を使って電池の電圧を測りました。乾電池1個では1.5Vを示します。これはよく知られた値ですね。では、電池を2個直列につなぐとどうなるでしょう?


答えは3.0Vです。電圧が足し算になります。これは、電流を押し出す「勢い」が2倍になったということ。懐中電灯で単三電池を2本・3本と入れるほど明るくなるのも、まさにこの原理です。
抵抗器の電圧は0V?
面白い発見がありました。回路につながっていない抵抗器単体にアナログ電圧計をあてると、0Vを示します。「抵抗器は電気を使わないの?」と思うかもしれません。

ところが、電池・抵抗器・導線で回路を組んでから測ると、今度は抵抗器にもちゃんと電圧が発生しています。これは、電流が流れてエネルギーが使われている証拠です。

電池の電圧は回路を繋いでもあります。

回路がつながって初めて、電流も電圧も「生きる」のです。電気の世界は、孤立した部品ではなくつながり全体で動いている――そのことが、実験を通じてじんわり伝わってくる瞬間でした。
電圧は回路の状況によって電流よりも値がコロコロ変わりやすいので、特に接続部を軽く握ることに注意が必要です。

今回は電圧計の使い方と電圧の基本的な性質を学びました。次回はいよいよ、電圧を使った実験に進みます。直列回路と並列回路では、それぞれの部分にかかる電圧にどんな規則があるのか、電流と比較しながら探っていきます。電流と電圧、2つの「物差し」が揃うと、電気回路の見え方がガラリと変わるはずです。お楽しみに!
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!
5月のイチオシ実験!
キーンと冷えるドライアイス!気温が上がってくるこの時期・ドライアイスを使った昇華・凝結・等速度直線運動の実験はいかが?

液体ゼロ!ドライアイスが消えるまでの3時間を科学する(昇華・凝結・等速度直線運動)
テレビ番組監修・イベント等のお知らせ
- 4月30日(木)「THE突破ファイル」(日本テレビ)の科学監修を担当しました。
- 5月8日(金)理科教育ニュースを担当しました。
- 6月14日(日) 千葉大学インスタレーション「探究」にて講師を務めます
- 6月26日(金) 千葉大学の公開研究会(中学理科について授業公開予定)
- 7月18日(土) 教員向け実験講習会「ナリカカサイエンスアカデミー」の講師をします。お会いしましょう。
書籍のお知らせ
- 『大人のための高校物理復習帳』(講談社)…一般向けに日常の物理について公式を元に紐解きました。特設サイトでは実験を多数紹介しています。※増刷がかかり6刷となりました(2026/02/01)

- 『きめる!共通テスト 物理基礎 改訂版』(学研)… 高校物理の参考書です。イラストを多くしてイメージが持てるように描きました。授業についていけない、物理が苦手、そんな生徒におすすめです。特設サイトはこちら。

各種SNS(更新情報をお届け!)
X(Twitter)/instagram/Facebook(日本語)
Explore
- 楽しい実験…お子さんと一緒に夢中になれるイチオシの科学実験を多数紹介しています。また、高校物理の理解を深めるための動画教材も用意しました。
- 理科の教材… 理科教師をバックアップ!授業の質を高め、準備を効率化するための選りすぐりの教材を紹介しています。
- Youtube…科学実験等の動画を配信しています。
- 科学ラジオ …科学トピックをほぼ毎日配信中!AI技術を駆使して作成した「耳で楽しむ科学」をお届けします。
- 講演 …全国各地で実験講習会・サイエンスショー等を行っています。
- About …「科学のネタ帳」のコンセプトや、運営者である桑子研のプロフィール・想いをまとめています。
- お問い合わせ …実験教室のご依頼、執筆・講演の相談、科学監修等はこちらのフォームからお寄せください。

