手作りブーメランで実験!なぜ戻ってくるの?回転の科学(揚力・ジャイロ効果・歳差運動)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「投げたものが、なぜ自分のところへ戻ってくるの?」
ブーメランを初めて見た人が必ず抱く、この不思議な疑問。実はそこには、飛行機の翼やコマのような、いくつもの科学の仕組みが重なり合っています。一つひとつ、順番にひもといていきましょう。きっと、身の回りの「当たり前」が、まったく違って見えてくるはずです。
ブーメランの断面は、飛行機の翼と同じ形をしている
まずはこちらの室内ブーメランを買ってみました。このブーメランふわふわしていて、顔に当たっても痛くないのが特徴です。簡単に投げられるので感覚を掴むにはバッチリですね。

これを参考にして作ったのがこちらのブーメランです。

こちら『ブーメランは、なぜ戻ってくるのか?』の本に載っていたのを参考にして、改良を加えました。
紙製ブーメランの作り方
まずポイントは、固い紙を使うことですが、単なる厚紙だとうまくできませんでした。そこでいろいろ試してみた結果、次の板目表紙という紙が良かったので、こちらを買いましょう。

この紙を使って、縦13cm、横3cm、そして切れ込みを1.5cm入れます。
縦13cm

横3cm

切れ目 1.5cm

これを3枚用意します。

この3枚を切れ込みのところを使って組み合わせてます。角度はそれぞれの羽が120度くらいになるように、形を整えてから、

中心をホチキスで3箇所止めます。さらに回転力アップのため(慣性モーメントを強くするため)、クリップを羽の先につけましょう。

クリップが取れないようにビニールテープを巻きます。

これで完成。最後に調整をかけていきます。これが大切。ブーメランを横から見て、右側が少し上になるようん、羽を捻っていきます。

そして全体がお椀型になるように整えていきます。


このあたりがわかりにくいので動画にしました。動画をご覧ください。
投げ方
投げ方についても上の動画で紹介しましたが、羽の先を持って、縦向きにして、前に押し出すという意識を持たないで、回転させることを意識して投げます。手首のスナップをつけて、回転させましょう。

うまく回転させると、手元に戻ってきます。
こちらは市販品のダイソーで売られているブーメランです。先ほど作った紙製のブーメランと比較してみると、同じ形になっているのがよくわかります。

羽の形状は飛行機の翼のようになっており、右上が上がっています。

横から見ると、全体がお椀型のような形になっています。

投げ方についてもダイソーのブーメランにはQRコードがついていて、こちらの動画を見ることができます。わかりやすいですね。
ではなぜいったいこのような形をとると戻ってくるのでしょうか。
なぜブーメランが戻ってくるのか?
空気の流れる速さが変化して、揚力(ようりょく)と呼ばれる「ものを持ち上げる力」が生まれます。飛行機があの巨大な機体を空に浮かせていられるのも、まさにこの揚力のおかげです。またもう一つ大切なのが歳差運動と呼ばれる回転の力を使っているのが特徴です。ジャイロ効果と関係があるのですね。
ブーメランは回転しながら前に進んでいます。慣性モーメントの働きによって、回転させたものは、回転をし続けようとします。回転しているものは軸がブレにくく、安定して回り続けます(ジャイロ効果)。
このとき、上半分の翼は回転の向きと進む向きが同じなので、空気に対してより速く動きます。逆に、下半分の翼は回転の向きと進む向きが逆なので、ゆっくり動くことになります。揚力は速く動くほど大きくなるので、上半分は揚力が大きく、下半分は揚力が小さいという差が生まれます。この差が、ブーメランを「傾けようとする力(トルク)」を生み出します。
この揚力の差によって、回転軸をさらに別の方向に回転させようとすることが起こり、結果としてブーメランはもう一方の別の方向に回転していきます。これが歳差運動です。こちらの回転台を使った実験を見ると歳差運動の不思議を感じることができます。

直感では「傾ける力がかかったら、そのまま傾く」と思いがちですが、高速回転しているブーメランは力の向きと垂直の方向に動くという、不思議な性質を持っています。これが歳差運動の醍醐味です。

これがブーメランが戻ってくる仕組みです。もう一度こちらの画像を見てください。縦に投げると、回転しながら戻ってきます。


歳差運動だとコマが有名です。地球ゴマのこちらの動画もご覧ください。
また戻ってきっと気には、くるりと水平になってホバリング(その場に浮かぶような動き)して戻ってきます。

これも歳差運動で説明できます。飛行中、前方半面で発生する揚力と後方半面で発生する揚力の差によって生まれる、もう一つの歳差運動が、ブーメランの回転面を徐々に水平に近づける方向に働くため、戻ってきたブーメランが水平にふわりと浮かぶような動きを見せます。
ブーメランの軌道は、見た目は円っぽく見えますが、実はいくつかの点で「理想的な円運動」とは異なります。ブーメランは飛びながら歳差運動によって回転軸の向きが少しずつ変わっています。それに伴い、揚力の向きも常に変化し続けています。向心力が一定方向にかかり続ける理想的な円運動とは、根本的に仕組みが違います。
実際のブーメランの軌道をよく見ると、きれいな円ではなく、少しずつ内側に向かって巻き込まれる、どちらかというと「らせん状に近い軌道」を描いています。歳差運動が進むにつれて軌道の曲がり方が変化するためです。
お椀型にすると回転半径が小さくなる
ブーメラン全体を真上から見たとき、平らではなく、中心が少し高く、両端が下がったお椀のような山形にした形にすると、回転半径が小さくなります。
これには理由があります。平らなブーメランでは、揚力はほぼ回転面に垂直な方向、つまり横向きに発生します。ところがお椀型にすると、両翼の揚力が少し内側(中心軸の方向)に向くようになります。これにより、軌道を曲げる向心力が強くなり、円の半径が小さくなります。ちょうど、自転車でカーブを曲がるときに体を内側に傾けると小回りが利くのと同じイメージです。たったこの「わずかな反り」が、飛行軌道を大きく左右しているのですね。
無重力の宇宙でも戻ってきた!
驚くことに、2008年3月、土井隆雄宇宙飛行士が国際宇宙ステーションの船内で紙製ブーメランを投げる実験を行い、無重力下でも地球上と同様にブーメランが手元に戻ってくることが確認されました。これはとても重要な発見です。
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の土井隆雄さん(53)が、ブーメラン世界チャンピオンの栂井(とがい)靖弘さん(36)=大阪府大阪狭山市=から贈られたブーメランをISS内で投げる非公式の実験をした。ISS内には地上なみの大気圧があるが、無重力状態だ。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入った連絡によると、土井さんが縦に投げたブーメランはちゃんと元に戻ってきたという。
引用:宇宙でもブーメラン戻ってきた 土井さん実験(朝日新聞)
http://www.asahi.com/special/space/kibou/OSK200803200044.html
重力がなくても戻ってくるということは、ブーメランが戻る仕組みの本質は「揚力とジャイロ効果」であり、重力はあまり関係ないということを証明しています。
飛行機の翼の科学と、コマのジャイロ効果。一見バラバラな2つの物理の仕組みが、ブーメランという一本の木の板の中で見事に組み合わさっています。科学部でブーメランを作ったなら、ぜひ投げるときの角度や回転の速さを変えて、軌道がどう変わるか実験してみてください。きっと新しい発見があるはずです。
参考
Wikipedia「ブーメラン」
→ 翼断面の形状による揚力の発生、歳差運動による旋回のメカニズムまで、物理的に詳しく記述されています。参考文献も充実しています。

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