世紀の大失敗が世界を変えた!?アインシュタインの道を開いた「マイケルソン干渉計」
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
先日、国立科学博物館を訪れた際、ついに本物と対面することができました。それがこのマイケルソン干渉計です。実物を見たことがなかった私にとって、この装置が放つ圧倒的な存在感には、理科教師として、胸に迫るものがありました。今回は、この装置がなぜそれほどまでに凄いのか、その「魔法」の正体を解き明かしていきましょう。

https://youtu.be/K3HxikOs3mw
光を分けて、再び重ねる。シンプルだけど奥深い「干渉」の仕組み
装置の構成は驚くほどシンプルです。1つの光源、1つのハーフミラー(光を半分通し、半分反射する鏡)、そして2枚の鏡。たったこれだけです。まず、光源から出た光をハーフミラーに当てます。すると、光は「透過する道」と「反射する道」の2つに分かれます。分かれた2つの光は、それぞれ直交する方向に置かれた鏡(固定鏡と移動鏡)で反射して戻ってきます。
そして、再びハーフミラーで合流したとき、不思議なことが起こります。
2つの光が通った道の長さ(光路差)がほんの少しでも違うと、光の波が重なり合って、強め合ったり打ち消し合ったりします。その結果、観測面には美しい縞模様(干渉縞)が現れるのです。

世紀の大失敗が、物理学をひっくり返した?「エーテルの風」の謎
19世紀の科学者たちは、光は「エーテル」という目に見えない物質を波のように伝わっていくと信じて疑いませんでした。
マイケルソンとモーリーはこう考えたのです。 「地球が宇宙空間を猛スピードで進んでいるなら、自転車で走る時に風を感じるように、光もエーテルの風の影響を受けて、進む向きによって速さが変わるはずだ!」
彼らはこの干渉計を使って、そのわずかな速さの違いを測ろうとしました。ところが、何度、何度、極限まで精密に測定しても、光の速さに変化は見られなかったのです。科学的に言えば、これは仮説が全く立証されなかった「失敗」の実験でした。
アインシュタインの扉を開いた「世界で最も価値のある失敗」
しかし、この「失敗」こそが科学の歴史を変えました。
「エーテルの風なんて吹いていない。つまり、エーテルなんて存在しないんだ!」というこの結果は、当時の常識を根底から揺るがしました。そしてこの「光の速さは、どんな時でも、誰から見ても変わらない」という事実こそが、後にアインシュタインが特殊相対性理論を導き出す最大のヒントになったのです。
科学の重みをその手に!国立科学博物館での実体験
国立科学博物館に展示されているこの装置、実は自分の手で触ることができるんです!鏡を支える部分を指先でほんの少しだけ、わずかに歪ませるだけで、目の前の縞模様がスルスルと動いていきます。目には見えないほど微小な距離の変化を、光の縞が鮮やかに教えてくれる。
「ああ、今、私は光の波そのものを見ているんだ……」
そんな感動が、指先から伝わってきました。大学入試の問題集の中でしか見たことがなかった装置が、目の前で科学の歴史を語りかけてくれる感覚。まさに感無量でした。
一見すると難しそうな物理の法則も、その裏には科学者たちの執念や、予想外の発見といったドラマが隠されています。みなさんも博物館へ行く機会があれば、ぜひこの歴史を動かした装置を探してみてください。
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