家電が壊れる理由を考える。不思議な「パウリ効果」を科学で解明!
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
物理学の世界には、ちょっと不思議で、でも当事者にとっては切実な「パウリ効果」というジョーク交じりの言葉があります。

理論物理学者のヴォルフガング・パウリ(1900年 – 1958年)は、実験が非常に苦手で、彼が実験室に入っただけで高価な機材が壊れたり、装置に触れた瞬間に不可解な故障が起きたりしたといいます。現代でも、なぜか特定の人が触れると家電がすぐ壊れてしまう現象を、親愛を込めて「パウリ効果」と呼ぶことがあります。 wikipedia
しかし、理科教師の視点からこれを見ると、魔法でも呪いでもなく、そこには明確な「科学的な理由」が隠されています。なぜ特定の人が機械を壊しやすいのか、その謎を解き明かしていきましょう。
1.見えない雷!静電気による電子回路の破壊
最も可能性が高い原因は、私たちの体から放たれる「静電気」です。
冬場にドアノブに触れて「パチッ」とした経験はありませんか?私たちの体には、服の摩擦などによって数千から数万ボルトもの静電気が溜まることがあります。指先が家電の金属部分やセンサーに触れた瞬間、一気に電気が流れるのですが、これが現代の精密機器には致命的なのです。
最近の家電はスマートフォンのように繊細なICチップ(電子回路)が組み込まれています。これらは非常にデリケートで、人間にとっては一瞬の火花でも、回路にとっては巨大な雷が落ちたようなもの。一瞬で回路が焼き切れてしまうことがあります。
帯電体質を科学的に防ぐには? 「自分は電気を溜めやすい体質だ」と感じる方は、服の「素材の組み合わせ」をチェックしてみてください。
物質には「プラスに帯電しやすい素材(ナイロン、ウール、レーヨン)」と「マイナスに帯電しやすい素材(ポリエステル、アクリル)」があります。これらを重ね着すると、摩擦によって激しく電気が発生します。
具体的には「ポリエステル(マイナス)×ウール(プラス)」といった反対の性質を持つ組み合わせが危険です。逆に、ウールとナイロンのようにプラス同士、あるいはポリエステルとアクリルなどのマイナス同士を組み合わせると、電気は溜まりにくくなります。
また、肌を保湿することも大切です。水分は静電気を逃がしてくれる役割を果たすため、保湿クリームを塗るだけでも「パウリ効果」を弱めることができるかもしれません。
2.物理的な「力加減」と「衝撃」の蓄積
本人は普通に扱っているつもりでも、機械にとっては許容範囲を超えた圧力がかかっている場合があります。
最近のタッチパネルは「静電容量方式」や「感圧式」を採用しています。これらを指の腹ではなく、爪を立てて操作したり、強い力で押し込んだりすると、内部のスイッチが物理的に変形・破損してしまいます。
例えばIHクッキングヒーターの天板は強化ガラスですが、重い鍋を「ドン」と置く衝撃を繰り返すと、目に見えない微細な亀裂(クラック)が生じます。そこから水分が入り込んだり、熱による膨張で亀裂が広がったりして、故障につながるのです。
また、コンセントを抜くときにコードを引っ張る癖はありませんか?根本のプラグを持たずにコードを引くと、内部の銅線が少しずつ「断線」していき、ある日突然動かなくなるのです。
3.手汗による「ショート」と「腐食」
私たちの手汗に含まれる水分や塩分が、電気の通り道を変えてしまうこともあります。
水(特に塩分を含む汗)は電気を非常に通しやすい性質を持っています。手がわずかに湿っている状態でスイッチを触ると、水分が隙間から内部に侵入します。すると、本来流れてはいけない場所に電気が流れる「短絡(ショート)」が起こり、基板がダメージを受けます。
また、一度で壊れなくても、触れるたびに微量の水分が基板に付着し続けると、金属部分が錆びて「接触不良」を起こします。これが原因で、特定の人が使うときだけ反応が悪い、といった現象が起きるのです。
4.身につけている「磁石」の干渉
その人自身ではなく、持ち物が犯人というケースもあります。バッグの留め具やスマホケースに使われている強力なマグネット。これらが家電の制御回路やカードリーダーの読み取り部に近づくと、強力な磁場によって誤作動を誘発したり、データが書き換わったりして故障の原因になります。
科学的なアドバイス
もし皆さんの周りに「パウリ効果」を持つ方がいたら、まずはその方の「一日の行動」や「服の組み合わせ」を観察してみることを提案します。
「服を天然素材(綿など)に変える」
「家電に触る前に、壁や床に手をついて放電する」
「指先ではなく指の腹で優しく触れる」といった具体的な対策をとることで、パウリ効果はきっと克服できます。
科学の視点で観察すれば、不思議な現象も解決の糸口が見えてきます。身の回りの故障の原因を、ぜひ一度「科学の目」で探してみてくださいね!
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