窓際の水晶玉が放火犯? 六本木ヒルズでも起きた「収斂(しゅうれん)火災」の科学
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「綺麗な水晶玉を窓辺に飾っていたら、いつの間にか部屋が燃えていた」 まるでミステリー小説のような話ですが、これは実際に起こりうる科学現象です。中学1年生で「光とレンズ」の授業をしているとき、ふと記憶が蘇りました。「たしか水晶玉で光が集まってしまったことによって起こった火事のニュースがあったような……」
気になってすぐにネットで調べてみたところ、驚くべきことに、近代的な高層ビルである「六本木ヒルズ」でも同様のボヤ騒ぎが起きていたことがわかりました。

六本木ヒルズで起きた「謎のボヤ」の正体
2015年の記事ですが、その原因として疑われたのが、なんと「水晶玉」でした。 なぜオフィスに水晶玉があったのかは謎ですが、授業でこの話を生徒に見せたところ、みんな「まさか!」と驚いていました。
警視庁麻布署によると、事務所の窓際に飾られていた直径約15センチの水晶玉がレンズのかわりとなり、太陽光で段ボールが燃えた可能性があるという。
引用:yomiuri online
「収れん火災」という科学現象
六本木ヒルズという最新鋭のタワーで、太陽光という原始的なエネルギーによるボヤ騒ぎが起きるとは、少し怖くもあり、科学の普遍さを感じさせられますね。このように、凸レンズ状の物体によって太陽光が一点に集中し、物が発火することを「収れん火災」といいます。
理科の授業で習う通り、凸レンズには光を屈折させて一点(焦点)に集める性質があります。小学生の頃、虫眼鏡で黒い紙を燃やす実験をしたことがある方も多いでしょう。あの現象が、意図せず部屋の中で起きてしまったわけです。
身の回りに潜む「レンズ」を探せ!
火事の原因として挙げられている「水晶玉」も、形を見れば完璧な球体、つまり強力な凸レンズの一種です。しかし、気をつけるべきは水晶玉だけではありません。 水の入ったペットボトル、金魚鉢、ガラス製の花瓶、あるいは窓に貼り付けた透明な吸盤なども、条件さえ揃えばレンズの役割を果たしてしまいます。
「太陽が動く」ということもポイントです。朝は大丈夫でも、昼下がりに太陽の位置が変わり、ちょうど燃えやすいカーテンや段ボールに焦点が合ってしまった瞬間に、スイッチが入るのです。
身近にある凸レンズに気がつく、とても良い(そして少し怖い)事例ですね!ぜひ窓辺のものをチェックしてみてください。
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