【雷対策】なぜそのポーズ? 「かかとを合わせてつま先立ち」が命を救う科学的理由(Excite Bit)【インタビュー掲載】
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
ゴロゴロ……ピカッ! 急な雷雨に見舞われたとき、みなさんはどう身を守りますか? 「高い木の下には行かない」「金属を外す(※実はあまり意味がないと言われていますが)」など、いろいろな迷信や対策がありますよね。
その中でも、「雷が鳴ったら、かかとを合わせてつま先立ちをする」という不思議なポーズを聞いたことはあるでしょうか? まるでバレリーナのようなこの体勢。実は、これには電気工学に基づいた命を守るための理由があるのです。
本日は、ニュースサイト「Excite Bit(エキサイトビット)」に掲載された私のインタビュー記事をもとに、雷と電気の科学についてお話しします。
訪問日:平成28年9月24日
なぜ「かかと」を合わせるの? 電気の通り道を考える
記事の中で、記者さんから「なぜ、かかとをあわせてつま先立ちが良いのですか?」という直球の質問をいただきました。 私の回答はこちらです。
「まず足を開いていると、並列回路になります。雷が近くに落ちた場合、電流がその場所から広がっていきますが、足を開いていると、片方の足から股間にいき、もう片方の足まで通ってしまいます。体脂肪が測れる体重計も同じように弱い電気を流しています。人間は電気抵抗が低く、電気が通りやすいですね。電気が体に通るとダメージをうけます。足を閉じるということには、電気の通る道を作らないという意味があるのだと思います」
少し詳しく解説しましょう。 地面に雷が落ちると、その地点を中心に電流が波紋のように地面を伝わって広がります。このとき、地面には場所によって電圧の差(電位差)が生まれます。
もし足を大きく広げて立っていると、右足と左足の地点で電圧に差ができてしまいます。 電気は電圧の高い方から低い方へ流れる性質がありますから、「右足から入って、身体を通って、左足へ抜ける」という回路ができあがってしまうのです。これを専門用語で「歩幅電圧(ほはばでんあつ)」による感電といいます。心臓に近い上半身を電気が通ると致命傷になりかねません。
そこで「かかと」をくっつけます。 かかと同士を接触させておけば、もし足から電気が入ってきても、「右足→かかと→左足」というショートカットコース(バイパス)ができます。 電気は通りやすい(抵抗の少ない)道を優先して流れるため、抵抗の大きい体内深くを通らず、足元だけで電気が通り抜けてくれる可能性が高まるのです。
究極の対策は「逃げる」こと
「電気工学的に考えると……」ということで、このようなポーズの意味を解説しましたが、これはあくまで、周りに何もない平原で雷に遭ってしまったときの「最後の手段」です。
雷から身を守るための一番の対策は、建物や車の中に避難することです。
鉄筋コンクリートの建物や、金属で囲まれた車の中は「静電遮蔽(せいでんしゃへい)」という効果で、中の人に電気は流れません。 「ポーズをとれば安全」と過信せず、まずは安全な場所へ移動することを最優先にしてくださいね。
自然現象は恐ろしいものですが、その仕組みを理科の知識で紐解くと、生き残るための知恵が見えてきます。
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