塩素系洗剤・酸素系洗剤は漂白や除菌に効果あり!(お掃除の科学)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

お掃除の科学についてのまとめ記事はこちらからご覧ください。

洗剤の驚異の化学(お掃除の科学)

塩素系洗剤(ハイター、カビキラー、キッチンハイターなど)は、次亜塩素酸ナトリウムの強い酸化力で、汚れの色素や菌を分解します。効き目のあるのは次のような汚れです。

カビ 浴室のゴムパッキン、タイルの目地、壁の黒カビ

除菌・消臭 まな板、ふきん、排水口のぬめり、生乾き臭

茶しぶ・コーヒー渋 マグカップ、ポットの内側、食器の着色汚れ

白い衣類の黄ばみ・黒ずみ:襟や袖の汚れ、食べこぼしのしみ

野菜の色素汚れ カレーやトマトソースがついたプラスチック容器(白色のもの)

デメリットとしては、塩素系は漂白力と除菌力が強力ですが、色柄物は色落ちし、金属はさびることがあります。

また酸素系洗剤(オキシクリーン、酸素系漂白剤、過炭酸ナトリウムなど)は過炭酸ナトリウムなどが水に溶けて発生する酸素の力で、汚れを分解します(過酸化水素)。塩素系より穏やかで(酸化力は少し弱い)、色柄物にも使えるのが特長です。頑固なカビには力不足のことがあります。酸素系は40〜50℃くらいのお湯で使うと、効果が高まります。

上記に加えて、

ぬめり・軽いカビ:洗濯槽の裏側のヌメリ、排水口、浴槽の皮脂汚れ

油を含む汚れ:換気扇やコンロまわり(お湯に溶かしてつけ置きします)

などがあります。

酸化作用について

塩素系洗剤や酸素系洗剤には漂白作用があります。漂白剤には酸化漂白剤と還元漂白剤があります。家庭では主に酸化漂白剤が用いられます。ここでは酸化作用が大切になってきます。酸化とは「酸素を与える」「水素を奪う」「電子を放出させる」の3つのことを言います。例えば、

2Cu + O2 → 2CuO

銅は酸素を与えられたので、酸化反応です。

2CH3OH + O2 → 2HCHO + 2H2O

メタノールは水素原子を奪われたので、酸化反応です。

2Na + Cl2 → 2NaCl

ナトリウムは電子を放出したので、これも酸化反応です。

 酸化剤とは、相手から電子を受け取ることで(奪うことで)、相手を酸化させる物質のことです。例えば塩素は

Cl2 + 2e⁻ → 2Cl⁻

となり、電子を受け取ることができるので、酸化剤となります。

酸化漂白剤は、塩素系漂白剤(主に家庭で使われるのは次亜塩素酸ナトリウム NaClO)と酸素系漂白剤(主に家庭で使われるのは過炭酸ナトリウム 2Na2CO3・3H2O2、過酸化水素 H2O2)に分かれます。

塩素系漂白剤は、強力な酸化力を持っており、色物に使うと、その色ごと落ちてしまいますので、白物にしか使えません。また酸素系漂白剤は色物にも使うことができます。

塩素系洗剤(塩素系漂白剤)

 塩素系洗剤は、油汚れにはあまり効きません。塩素系洗剤の得意分野は、漂白、除菌、カビ取りです。色素や菌を酸化の力で分解するはたらきです。

 塩素系漂白剤の主成分は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)(wiki参考)と水酸化ナトリウムです(次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる)。

例えばキッチンハイターが有名ですね。

キッチンハイターの成分表を見ると、

  • 水
  • 次亜塩素酸ナトリウム
  • 水酸化ナトリウム
  • 界面活性剤

 というように水酸化ナトリウムも入っていて、アルカリ性に傾けています。塩素系漂白剤は次亜塩素酸ナトリウムが分解しないようにアルカリ性に保たれています。アルカリ性という性質によって汚れに効くという効果も持っていますが、主なポイントは次亜塩素酸(HClO)の酸化作用です。

次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)から生成される次亜塩素酸(HClO)の酸化力が、漂白作用を示します。次亜塩素酸ナトリウムを水に溶かすと、一部が水と反応して次亜塩素酸と水酸化ナトリウムに分解されます。

この反応は可逆反応(平衡状態)です。生成される水酸化ナトリウムによって溶液が強いアルカリ性になるため、通常の次亜塩素酸ナトリウム液中では次亜塩素酸(HOCl)の割合は低く、多くは次亜塩素酸イオン(ClO-)の状態で存在しています。溶液のpHを下げて酸性に傾けると、次亜塩素酸が大量に生成されます。

酸を加えすぎて溶液が酸性(pH5以下)になると、次亜塩素酸がさらに分解して有毒な塩素ガスが発生します(いわゆる「混ぜるな危険」の反応です)。

画像引用 iwaki ポンプなるほど 用語編【遊離残留塩素と結合残留塩素】

 https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/33/

また次亜塩素酸は、酸素系漂白剤の過酸化水素と反応して効力を失うので、塩素系洗剤(漂白剤)と酸素系洗剤(漂白剤)を一緒に使うことは意味をなしません。

参考『図解入門よくわかる最新洗浄・洗剤の基本と仕組み』(秀和システム)

なぜ塩素系漂白剤が効くのか?ポイントをまとめていきます。

1 色の分子を壊す(漂白)

 カビの黒ずみや茶渋などの「色」を作っている分子の構造を、酸化によって破壊します。構造が壊れると光を反射できなくなって、色が消えます。多くの色素は、炭素同士の二重結合(C=C)が長く連なった構造を持っています。この構造が特定の光を吸収して、それ以外を反射することで、私たちの目には色付いて見えます。

 次亜塩素酸が反応すると、二重結合が引き裂かれ、単結合(-C-C-)になります。結合が切れて単結合ばかりになると、光を吸収できなくなり、すべての光を通すか反射するようになります(白くなる・無色になる)。詰まるところ、漂白は「汚れをどこかへ運び去っている」のではなく、「色の正体である分子の形を、色を出せない形に作り変えている」のです。

例えばお風呂のゴムパッキンの黒いカビが消えるのでしょうか。これは中性洗剤で何度擦っても落ちない汚れでした。そこで使ってみたのがこちらのカビキラーPROです。

Amazon カビキラーPRO

ジェルタイプなので、塗った後長く止まります。できるだけ乾いていた方が効きが良いので、濡れている場合はタオルなどで表面を拭きましょう。かけてみました。

30分待って水で流します。すると…

消えてはいないものの、かなり薄くなりました。一度で消えない場合は繰り返すことによって徐々に目立たなくさせることができます。

2 タンパク質をバラバラにする(分解)

 排水溝のヌメリや髪の毛などはタンパク質でできています。タンパク質の骨格であるペプチド結合(CONH)が、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)と反応すると、COとNHに切断されます。

ChatGPTを使って画像は作成

 本来、ペプチド結合は水だけではなかなか切れませんが、強いアルカリ性と酸化力が触媒のような働きをし、巨大な鎖をアミノ酸や小さなペプチドへと「バラバラに断片化」します。これにより、固形だった髪の毛などが水に溶ける液体状へと変わっていくのです。

 また強いアルカリ(強塩基)には、タンパク質をアミノ酸にまで分解してしまう力があります。たとえ完全に分解できなかったとしても、タンパク質高分子の途中の「アミド結合」という部分を、水と反応させることで切ることができます(加水分解反応)。こうすると、タンパク質は水に溶けやすい形に変わっていきます。

アルカリ性の洗剤(頑固な油汚れ)に効く科学的な意味

カビは糸状菌と呼ばれる微生物です。目に見える黒カビ・ピンク汚れなどがこれにあたります。カビが好む条件が浴室には整っています。

水分 入浴後の高い湿度、壁や床に残った水滴

温度 20〜30℃前後というカビが最も好む温度帯に、浴室の温度がちょうど当てはまる

栄養源 皮脂、垢、石けんカス、髪の毛など、人体由来の有機物が豊富

酸素 換気扇や隙間からの空気の出入り

この4つの条件が同時に満たされると、カビの胞子が菌糸を伸ばして繁殖します。浴室はカビにとって天国のような環境になってしまいます。またカビは表面だけでなく、ゴムパッキンの隙間やタイルの目地など、微細な凹凸に菌糸を食い込ませて根を張るようにして増えていきます。これが、一度生えると表面を拭くだけでは落ちにくい理由です。塩素系洗剤は、細菌やウイルスの表面にあるタンパク質の膜や、内部の遺伝子(DNA/RNA)を酸化攻撃で破壊します。

3 アミノ基の酸化

画像はChatGPTを使って作成

塩素系洗剤(次亜塩素酸ナトリウム(NaClO))の攻撃は鎖を切るだけではありません。タンパク質を構成するアミノ基(-NH_2)に対しても、反応します。

ここで生成される R-NHCl(クロラミン)は、非常に不安定な物質です。さらに酸化が進むと、最終的に窒素ガスや水、二酸化炭素にまで分解されることもあります。

4 架橋構造の破壊

髪の毛がなぜあんなに丈夫なのか知っていますか?それは、タンパク質の鎖同士が「硫黄(S)」を介してガッチリ握手している架橋構造があるためです。

塩素系洗剤はこの「握手」さえも酸化の力で引き剥がします。この強固な架橋構造を破壊されると、髪の毛は形を保てなくなり、トロトロに溶けてしまいます。

シンクの除菌は水分を残さないことが決めて!

塩素系漂白剤の殺菌効果はあくまで「そのとき菌を減らす」効果であり、翌日にはまた新しい菌が増殖を始めます。また金属を傷める可能性もあるため、使用後はしっかり水で洗い流すことも大切です。

また意外と見落とされがちですが、菌の繁殖に最も効果が高く、コストもかからない方法が水分を残さないことです。ほとんどの細菌は、湿った環境でなければ活発に増殖できません。シンクを使い終わったあとに、乾いた布やスクイージーで水気をしっかり拭き取っておくだけで、菌の増殖スピードを大幅に落とすことができます。乾燥こそが最高の除菌であると言えます。

 塩素系洗剤を「混ぜるな危険」とは?

 絶対に伝えておかなければならないのが、「混ぜるな危険」の理由です。家庭用の「塩素系漂白剤」の主成分は、一般に次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)です。製品中では、次亜塩素酸ナトリウムが分解しにくいようにアルカリ性に保たれています。

 ここに酸性の洗剤(クエン酸など)が混ざると、塩素ガスが発生する恐ろしい化学反応が起きます。

画像引用 iwaki ポンプなるほど 用語編【遊離残留塩素と結合残留塩素】

 https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/33/

 この右端に出てくる 塩素ガスが猛毒です。第一次世界大戦で毒ガス兵器として使われたこともあるほど危険な気体で、吸い込むと肺の水分と反応して塩酸に変わり、呼吸器に致命的なダメージを与えます。

 ここで疑問が。一見、塩素と水が混ざるだけでなぜ強い酸である「塩酸」が生まれるのか、不思議ですよね。実はここでも、塩素の「水素を奪う」(相手を酸化させる:酸化剤)という強烈な性質が働いています。塩素ガスが肺の粘膜などの水分に触れると、すぐに次のような反応が起こります。

 単なる水から塩酸ができるのかというと、塩素分子の結合が切れ、一方が水の水素を奪い取って HCl になり、もう一方が残りの OH とくっついてHClOになるためです。この反応は非常に素早く進みます。つまり、塩素ガスは水に溶けるだけで、「強力な酸(塩酸)」と「強力な酸化剤(次亜塩素酸)」の両方を同時に作り出してしまうのです。これによって肺の細胞が攻撃を受けることになります(2のタンパク質の分解で説明したことが自信に起こります)。

「塩素系洗剤」と「酸」は絶対に会わせてはいけない禁断の組み合わせなのです。

酸素系洗剤(酸素系漂白剤)

酸素系漂白剤には、大きく分けて過酸化水素(かさんかすいそ)と過炭酸ナトリウム(かたんさんナトリウム)があります。過酸化水素は化学式でH2O2、構造式でHO-OHと書きます。水(H2O)に酸素原子が1つ多いような形で、この「余分な酸素」が漂白のカギになります。

過酸化水素は電子を他の物質から奪い取って、自分自身はより安定な水(H2O)に変化しようとする性質(酸化作用)が強く働きます。

衣類のシミ、黄ばみ、お茶の渋みなどの「色」は、特定の有機化合物(色素)が持つ「共役二重結合」という化学構造から生まれています。この構造が光を吸収することで、私たちの目に「色」として見えています。

過酸化水素が持つ強い酸化力は、この色素の化学構造を直撃します。

• 過酸化水素が色素から電子を奪い取る(酸化する)。
• 色の原因だった分子の結合がブツブツと切断される、または形が変わる。
• 構造が壊れた結果、光を吸収できなくなり無色(白)になる。

つまり、汚れを「洗い流す」のではなく、化学反応で汚れの「色そのものを破壊して透明にしている」のが漂白の仕組みです。

衣類用の液体漂白剤として売られているのは、主にこちらです。

参考 ワイドハイターEX

成分:過酸化水素(酸素系)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)

たとえばワイドハイターEXの成分は、過酸化水素(酸素系)と界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)です。界面活性剤は、水と油をなじませて汚れを落としやすくする役目をします。

絹やウールにも使える?使えない?

過酸化水素の液体タイプは作用がおだやかで、タンパク質でできた繊維(絹やウールなど)にも使うことができます。一方、粉末で売られている過炭酸ナトリウムは、水にとかすと過酸化水素を生み出すので、同じように漂白のはたらきをします。ただし、過酸化水素よりも強力なので、タンパク質の繊維には使うことができません。同じ酸素系でも、使えるものがちがうので、洗濯表示や製品の説明をよく確認しましょう。

塩素系より弱いからこそ、色物にも使える

酸素系漂白剤は、塩素系漂白剤よりも作用が弱めです。そのため、衣類の染料を分解してしまうほどの力はなく、色物の漂白にも使うことができます。「弱いこと」が、ここでは長所になっているのです。ただし、素材や染料によっては色落ちすることもあるので、目立たない場所で試してから使うと安心です。

アルカリ性にすると、漂白力がアップ!

過酸化水素の漂白のもとになっているのは、HOO-(パーヒドロキシルイオン)というイオンです。過酸化水素(HO-OH)は、そのままではあまりHOO-になりません。ところが、液をアルカリ性の側に傾けておくと、漂白作用が強くなります。

これは、アルカリ性の液に存在するOH-が、過酸化水素のH+を引き抜いてくれるからです。H+がぬけた過酸化水素がHOO-になり、漂白のはたらきが活発になるのです。

さらに、過酸化水素の漂白作用は、HOO-によって生まれる・OH(ヒドロキシラジカル)が強力に作用しているためと考えられているそうです。ヒドロキシラジカルは、とても反応しやすい性質をもつ粒子で、色のもとになる物質を分解してしまいます。(wikipedia参照)

過炭酸ナトリウムが強力なのは、なぜ?

過炭酸ナトリウムは、過酸化水素と炭酸ナトリウムを反応させて得られる物質です。水にとかすと、過酸化水素に加えて、アルカリ性の炭酸ナトリウムが出てきます。つまり、水にとかすだけで「過酸化水素」と「アルカリ性の液」がセットでそろうのです。先ほど学んだように、アルカリ側に傾いた過酸化水素は漂白力が強くなります。これが、過炭酸ナトリウムが強い漂白作用をもつ理由です。

こちらは鼻血汚れを過炭酸ナトリウムを使って漂白した様子です。色物ですが、鼻血だけの色が落ちているのがわかりますね。

鼻血の頑固なシミが消えた!過炭酸ナトリウムのすごい力を実験してみた(お掃除の科学)

<参考サイト>

石鹸百科(せっけん百科)

・過炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤)とは

・pHと過炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤)の漂白効果

・wikipedia 炭酸ナトリウム過酸化水素化物炭酸ナトリウム過酸化水素化物

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