富士山の頂上を再現!注射器一つで体験する「減圧沸騰」の驚き実験(状態変化)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「お湯が沸騰するのは100度になってから」……そんな風に思い込んでいませんか?実は、火を一切使わずに、少し冷めたぬるま湯を一瞬でボコボコと沸騰させる魔法のような方法があるんです。

今回は、注射器(シリンジ)一つで体験できる、驚きの「減圧沸騰実験」をご紹介します。教科書の中だけの知識だった「状態変化」が、目の前でダイナミックに姿を変える瞬間を一緒に観察してみましょう。

温度を変えずに「沸騰」させる不思議な注射器

理科の授業では、温度変化によって水が氷になったり水蒸気になったりする「状態変化」を学びます。しかし、実は「圧力」を変化させることでも、物質の状態を劇的に変えることができるのです。この実験は、いつもお世話になっているY先生から教えていただいた、シンプルながらも本質を突いた素晴らしい実験です。

【用意するもの】 ・注射器(シリンジ) ・お湯(70度程度)

【実験の手順】

1.まず、給湯器などから70度程度のお湯をビーカーに用意します。

2.注射器にお湯を少量だけ吸い込みます。このとき、後でピストンを大きく引くスペースを空けておくのがポイントです。

3.注射器の先を親指でしっかりと押さえ、空気が入らないように密閉します。

4.そのまま思い切りピストンを引いて、内部の圧力を下げてみましょう。

するとどうでしょう!温度を上げたわけではないのに、中のお湯が突然ボコボコと激しく沸騰し始めます

さらに面白いのは、引いていたピストンを元に戻すと、沸騰がピタッと止まることです。これにより、温度ではなく「圧力の変化」こそが沸騰の原因であることがはっきりと分かります。

山頂でお米がうまく炊けない理由

なぜ、圧力を下げるとお湯は沸騰するのでしょうか。

水が液体でいられるのは、周りの空気の重さ(大気圧)が「飛び出そうとする水分子」を上から押さえつけているからです。通常、1気圧の下では100度にならないと水分子は空気の押し返す力に勝てませんが、注射器の中で真空に近い状態(減圧)を作ると、水分子を抑える力が弱まります。その結果、低い温度でも水分子が元気に飛び出していけるようになり、沸騰が始まるのです。

引用:理科年表「固体、液体、気体の状態を教えてください。」https://official.rikanenpyo.jp/posts/6660

この原理は、私たちの生活にも密接に関わっています。例えば、富士山の頂上3776m(気圧が約630〜640hPa(地上の約3分の2)しかありません。)などの標高が高い場所では気圧が低いため、お湯が80度から90度くらいで沸騰してしまいます。そのため、普通に鍋でお米を炊こうとしても、芯が残ってうまく炊けない……なんてことが起こるのですね。

あの高いところに行くとお菓子の袋が膨らみます。

私たちは空気の海の底に住んでいる!ペットボトルの実験が明かす気圧の正体(大人のための高校物理復習帳)

身近な注射器一つで、地球の裏側の山頂と同じ環境が作れる。これこそが実験の醍醐味です。ぜひ、お湯の温度を変えながら、どのくらいの低音まで沸騰させられるか挑戦してみてくださいね!

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