電気の「高さ」が見えてくる!?キルヒホッフの法則を3Dで攻略しよう「水路モデル」(高校 物理 教材)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
みなさんは、「電気の回路」と聞いてどんなイメージを持ちますか?「目に見えない電気が流れていて、なんだか難しそう……」と感じる方も多いかもしれません。特に、高校物理で登場する「キルヒホッフの第2法則」は、式だけを見ていると迷子になりやすいポイントです。
実は、電気の世界には「高さ(電位)」という概念があります。まるで山登りやハイキングのように、どこが「上り坂」でどこが「下り坂」なのかが分かれば、回路の仕組みは一気に面白くなります。拙著「大人のための高校物理復習帳」(講談社)でも紹介をしましたが、なかなか紙面で伝えるのは動きもあって難しい。今回は、そんな目に見えない電気の「高低差」を、まるでゲームのように立体的に見せてくれる素晴らしいシミュレーションをご紹介します。
「思い込み」を捨てると、回路が見えてくる
キルヒホッフの第2法則を解くとき、「電池があるから電位が上がる」「抵抗があるから電位が下がる」と機械的に思い込んでいませんか?実は、それは少しだけ違います。電位が上がるか下がるかは、「自分が決めたコース(経路)をどちら向きに歩くか」によって変わるのです。川の流れに逆らって歩けば上り坂になるのと同じで、回路の見方も視点ひとつで変化します。
そんな「電気の高さ」を視覚的に理解するために重宝するのが「電位図」です。「高校 物理 教材」というサイトで、電位図をリアルに可視化してくれるシミュレーションを見つけたので、その魅力をお伝えしますね。
回路が立ち上がる!驚きの3Dシミュレーション
こちらのページにアクセスすると、まずは見慣れた平面の回路モデルが表示されます。

例えば並列回路を選んでみます。

ここでスイッチをONにすると、電気の粒(電荷)がチョロチョロと動き始めます。これだけでも可愛いのですが、本番はここからです。画面上の「立体」ボタンを押してみてください。

なんと、回路がニョキッと立ち上がり、立体的なモデルに変身しました!
電池の部分でググッと持ち上げられ、抵抗の部分で滑り台のように滑り降りていく様子が分かります。「電位が高い・低い」というのが、まさに「高さ」として表現されているのです。
直列と並列、エネルギーの使われ方の違い
さらに、このシミュレーションでは回路を「直列」「並列」に切り替えることも可能です。直列にしてみました。

特に注目してほしいのが、「粒の動くスピード」です。直列のときと並列のときでは、粒が流れる速さ(電流の大きさ)が変化しているのが一目で分かります。回路全体の抵抗が変わることで、どれだけの電気が勢いよく流れるようになるのか。作り込みが非常に細かく、「物理現象を直感的に理解してほしい」という制作者の熱いこだわりを感じます。
このツールは、マウス操作で色々な角度からグルグルと回して眺めることができます。真上から見たり、真横から坂道の急峻さを眺めたりしているうちに、気づけばキルヒホッフの法則が「数式」ではなく「景色」として頭に入ってくるはずです。
ぜひ、皆さんもこの「電気の山登り」を体験してみてください。
水路モデルは万能ではない——モデルの「限界」を知ることも大切な学び
この「水路モデル(3D電位図)」は、電圧や電流のイメージをつかむのにとても役立つ教材です。しかし、モデルはあくまでもモデル。電気回路の現象をすべて正確に表せるわけではありません。むしろ、その限界を知ることが、より深い理解につながります。
水路モデルは、高さ方向(Z軸)で電圧を表現するモデルです。直列回路であれば、抵抗による電圧降下を「階段の段差」として表現でき、直感的にわかりやすい図になります。ところが並列回路になると、このモデルは構造的な限界にぶつかります。並列回路では、それぞれの抵抗の両端にかかる電圧は同じで、違うのは「流れる電流の量」です。しかし電流の情報は「高さ(電位)」という枠組みからは取り出せません。そのため、並列回路を3D電位図で正確に表現しようとすると、どうしても図の一貫性が崩れてしまいます。
例えば水平の場所では水は流れないはずです。実際にポンプと組み合わせて水を使って流してみようとしても、循環しない可能性が高いです。また並列回路では電池を流れる電流の値が大きくなりますが、これも実際の水で考えると、うまく説明ができることではありません(ただし今回のシミュレーターではそれをうまく表現しようとしています)。
水路モデルの限界についてはこちらの記事にまとめたので併せてご覧ください。
また、今回のシミュレーターでは「本来は同電位のはずの導線部分」に段差がついて描かれていると、「電圧降下は抵抗の中で起きる」というキルヒホッフの法則の核心がかえって見えにくくなってしまいます。この点は修正の必要があるかなと思います。

これは、モデルの表現の難しさがそのまま「誤解の種」になってしまう例といえますが、シミュレーターとしてはとてもよくできていると私は思っています。
交流・コンデンサ・コイル……複雑な回路では表現がさらに難しくなる
水路モデルや3D電位図が苦手とするのは、並列回路だけではありません。時間とともに変化するコンデンサやコイルが登場すると、静的な「地形図」では表現できなくなります。コンデンサなら電圧が時間とともに変動するアニメーションが必要になりますし、コイルは電位ではなく電流の変化で表現しなければならないかもしれません。交流回路や発振回路、RLC回路ともなると、もはや固定された3D地形ではなく、時間発展する動的なモデルが必要になってくるのです。

「モデルの限界」を学ぶことが、本物の理解への近道
水路モデルや電位の3D表示は、「電位を高さで実感させる」という導入としては抜群の効果があります。しかし同時に、「このモデルでは表せないことがある」と気づくことも、とても大切な科学的思考です。科学において、モデルは現象の一部を切り取って見やすくしたものです。どんなに優れたモデルも、すべての現象を完全に再現することはできません。水路モデルの「ほころび」を発見したとき、それは失敗ではなく、「本物の電気回路の深さ」に一歩近づいた瞬間でもあると考えます。
キルヒホッフの法則が大活躍のホイートストンブリッジについて、実物を見たことありますか?こちらの記事も是非合わせてご覧ください。

お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!
6月のイチオシ実験!
レモンやオレンジで風船を割ろう!インパクトが抜群のリモネン風船の実験

テレビ番組監修・イベント等のお知らせ
- 6月3日(水)20:30〜 「
バカリズムのちょっとバカりハカってみた!」(テレビ東京)を科学監修・出演します。テーマは「 そばの出前は何人前まで運べるのか、限界を測ってみた」です。 - 6月4日(木) 7:00〜 「THE突破ファイル」(日本テレビ)について科学監修しました。
- 6月14日(日) 千葉大学インスタレーション「探究」にて講師を務めます
- 6月26日(金) 公開研究会「脱作業化!デジタル化と段階的指導で実現する オームの法則の探究」
- 6月28日(日) ダビンチマスターズ@昭和女子
- 7月18日(土) 教員向け実験講習会「ナリカカサイエンスアカデミー」の講師をします。お会いしましょう。
書籍のお知らせ
- 『大人のための高校物理復習帳』(講談社)…一般向けに日常の物理について公式を元に紐解きました。特設サイトでは実験を多数紹介しています。※増刷がかかり6刷となりました(2026/02/01)

- 『きめる!共通テスト 物理基礎 改訂版』(学研)… 高校物理の参考書です。イラストを多くしてイメージが持てるように描きました。授業についていけない、物理が苦手、そんな生徒におすすめです。特設サイトはこちら。

各種SNS(更新情報をお届け!)
X(Twitter)/instagram/Facebook(日本語)
Explore
- 楽しい実験…お子さんと一緒に夢中になれるイチオシの科学実験を多数紹介しています。また、高校物理の理解を深めるための動画教材も用意しました。
- 理科の教材… 理科教師をバックアップ!授業の質を高め、準備を効率化するための選りすぐりの教材を紹介しています。
- Youtube…科学実験等の動画を配信しています。
- 科学ラジオ …科学トピックをほぼ毎日配信中!AI技術を駆使して作成した「耳で楽しむ科学」をお届けします。
- 講演 …全国各地で実験講習会・サイエンスショー等を行っています。
- About …「科学のネタ帳」のコンセプトや、運営者である桑子研のプロフィール・想いをまとめています。
- お問い合わせ …実験教室のご依頼、執筆・講演の相談、科学監修等はこちらのフォームからお寄せください。


