溶岩が重ね塗りしてできた島。三原山でたどる伊豆大島の噴火史

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

伊豆大島を訪れたかった最大の理由、それは三原山への登山でした。2日目に引き続き、伊豆大島旅行の3日目の7月29日、ついにこの念願が実現しました。目の前に広がっていたのは、想像以上に生々しい「生きている地球」の姿でした。

伊豆大島は、海底からそびえる火山の島

伊豆諸島は、そのすべてが火山島です。日本列島の下には、海のプレート(フィリピン海プレート)が陸のプレートの下に沈み込んでいく場所があり、この沈み込みに伴って、決まった帯状の地域にマグマが発生しやすくなります。この帯に沿って火山が列をなして並んでいるのが、まさに伊豆諸島なのです。

伊豆大島の歴史も、この海に並んだ火山たちの物語から始まります。今から数十万年前、このあたりの海には、3つの火山があったそうです。この3つの火山は、やがて活動を終え、長い年月をかけて波にけずられ、少しずつ小さくなっていきました。そして数万年前、そのすぐ近くの海底で、新たな噴火が始まります。これが、今の伊豆大島をつくることになる火山の誕生です。

この新しい火山は、その後も何度も噴火をくり返し、かつての3つの古い火山の残骸をおおうようにして成長していきました。噴火に噴火を重ねるうちに、やがて3つの火山を土台にした、ひとつの大きな火山島へと姿を変えていったのです。今、私たちが目にしている伊豆大島は、いわば火山が噴火を重ね塗りしてできた島というわけですね。

さらにこのあたりは最近の出来事になりますが、およそ1700年前、三原山の山頂で大規模な水蒸気噴火が起こりました。地下水がマグマの熱で急激に水蒸気となり、爆発的に噴き出したのです。このとき、大量の溶岩や土砂が島をおおうように流れ下り、山頂部分がぽっかりと落ち込みました。こうしてできたくぼ地が、現在のカルデラです。

次に、1777年から始まった大噴火では、中央にある火口から大量の溶岩が噴き上がり、現在私たちが目にしている三原山の姿がかたちづくられました。その後もカルデラの中では、溶岩を流し出す噴火が何度もくり返されてきました。

そして1986年には、カルデラの外側で噴火が発生しました。これは、実におよそ560年ぶりのできごとだったそうです。「560年ぶり」と聞くと気が遠くなりそうですが、火山にとってはこれもまた、長い活動の歴史のほんの一コマにすぎないのですね。

さて出発だ!

山の中腹にある駐車場に車を停めて、さあ出発!と思って看板を見ると、「伊豆大島は島全体が活火山です」という文字が目に飛び込んできて、まずはあらためて身が引き締まりました。

国や大学等が火山観測機器を設置し、伊豆大島火山の活動状況を常時監視しています。もし火山に異常があれば、防災行政無線でお知らせします。しかし、突発的な現象には常に注意が必要です。火山活動の現況や、万が一、登山中に突発的な噴火が起こった場合の対処方法を事前にご確認ください。

注意をしながら登ることにしました。三原山山頂口の駐車場から40分ほどのコースで、山頂まで登ることができます。

まずはこちらの写真をご覧ください。三原山の表面に見える川のような黒いスジは、1986年の噴火で山頂の火口からあふれ出た溶岩流の跡だそうです。

不思議な形をした「パホイホイ溶岩」

登山道の途中では、江戸時代に流れ出た「パホイホイ溶岩」を見ることができました。パホイホイ溶岩は、表面がなめらかで、縄をねじったような模様が特徴の溶岩です。マグマの粘り気が弱いときにできる形態です(日本付近の溶岩は粘り気が高いものが多いので、実は珍しい光景なのです)。そのため、日本語では「縄状溶岩(なわじょうようがん)」とも呼ばれます。ハワイ語の「pāhoehoe(パーホエホエ)」に由来する名前で、ハワイの火山でよく見られます。

パホイホイ溶岩は、約1100~1200℃と高温で、粘り気(粘性)が小さい玄武岩質のマグマからできます。

溶岩流は約1000℃もの高温ですが、空気に触れている表面から冷えて固まり始めます。しかし内部は高温を保ち続けるため、粘り気の弱い溶岩では、後から流れてきた溶岩が固まった表層を押し上げ、ドーム状に盛り上がることがあります。目の前の高まりは、こうしてできた溶岩の小山です。ここではさらに流れてきた溶岩が、内部から小山を押し割り、流れ下った様子も観察できました。

この辺りで見られる溶岩は、安永の大噴火(1777~1792年)で流れ出たものだそうです。安永の大噴火は山頂火口から始まり、溶岩やスコリア(穴だらけの黒っぽい小石)を大量に噴出して三原山を作った後、三原山北西のこの付近から溶岩が続々と噴き出しました。

ここでハワイはいいけど、日本なのになぜ玄武岩質なのか?と気になった人もいると思います。日本の一般的な火山は、

海洋プレートの沈み込み

水が放出される

マントルが部分融解

玄武岩質マグマができる

地殻の中で長く滞在

結晶分化・地殻との混合

安山岩質・流紋岩質になる

という流れです。このようにマグマは最初は玄武岩質として生まれます。

しかし、地殻の中で長く過ごすと成分が変化し、安山岩質や流紋岩質になります。伊豆大島は地殻が薄いため、マグマがあまり変化せず玄武岩質のまま噴出します。一方、新島や神津島では地下でマグマが長く進化するため、白い流紋岩ができるのです。なお富士山は玄武岩質マグマだそうです。

ついに山頂へ ― 三原山中央火口との対面

ここから徒歩で30分ほど歩くと、いよいよ山頂に到達しました。

三原山中央火口を目指して歩いていきます。山頂付近では、ゴジラ岩と呼ばれている恐竜に似た岩にも出会いました。長い年月の風化によって、まるで生き物のような表情を持つようになった溶岩の姿に、思わず足を止めてしまいます。

そして、ついに火口が見えるところまで到着しました。ここは、地球内部から上がってくるマグマの出口にあたる場所です。直径約300メートル、深さ約200メートルという規模の穴が、目の前にぽっかりと口を開けています。1986年噴火では、マグマがこの穴を満たし、ついにはふちからあふれ出て、カルデラの外側にまで流れ下ったのだそうです。

内壁には幾重にも重なった溶岩の層がはっきりと見えます。これは、噴火が一度きりの出来事ではなく、何度も何度もくり返されてきたことの証拠です。一層一層が、それぞれ違う時代の噴火の記録なのだと考えると、まるで地球が書きためてきた日記帳をのぞきこんでいるような気持ちになりました。私たちが立っているこの足元、数百メートル下には、1000℃を超えるマグマがゆっくりと蓄えられているのです。そう考えると、なんとも不思議な、そして少し背筋が伸びるような感覚に包まれました。

植物がほとんど生えていない火口周辺の荒々しい景色は、まるで別の星に降り立ったかのような不思議な感覚を与えてくれました。人間の一生に比べればほんの一瞬のような噴火のたびに、この地形は少しずつ姿を変えてきたのだと思うと、目の前の景色がまったく違って見えてきます。

山ができたり、穴があいたり、溶岩が流れたり。噴火のたびに風景が大きく変わる伊豆大島。しかし、しばらく噴火が起こっていない期間には、植物が日一日とたくましく再生していきます。溶岩の合間から力強く咲いていたサクユリの姿が、それを物語っていました。

三原山で出会った世界最大のユリ「 サクユリ」が教えてくれる島の進化と伝説

伊豆大島は、必ずまた噴火します。今しか見ることのできない移りゆく景色との出会い、それは、生きている地球を全身で体感できる、かけがえのない時間でした。

下山、そして海と温泉へ

感動を胸に、来た道を戻って下山しました。その後、昼食をとり、前日からもう一度行きたいと話していた「トウシキ遊泳場」に立ち寄りました。その途中にある地層大切断面をゆっくりと観察しました。こちらは伊豆大島といえばこれをみにいきたい!の二番目の場所。詳しくは別記事でまとめたいと思います

崖一面に広がる巨大バームクーヘン!伊豆大島の地層切断面に刻まれた1万8000年

それから場所を変えて、「元町浜の湯」へ。ここは水着で入る混浴の温泉で、目の前に広がる海を眺めながら入る開放感がとても素敵でした。ただし、夏の暑さのため、長くは入っていられませんでした。

そのため、今度は御神火温泉に行ってプール+温泉に入りました。ここでは3日間チケットを買っていたので、何度も入れて嬉しいですね。

最終日!

7月30日の最終日は、まずは弘法浜にて海水浴を1日目と同様に楽しんだ後に、伊豆大島ミュージアム「ジオノス」に行きました。

ジオノスでは大島の総まとめのような展示で、今まで見てきた地層の解説などが充実して、あ、ここ行った!こういう意味があったんだ!ということがよくわかりました。

中でも感銘を受けたのが、伊豆大島の柱状図です。よく問題などに出てくる柱状図が、実際にここまでかと調査で使われていることに驚きました。こういう問題ではない実際のものをみると感動しますね。火山灰層を鍵そうとすると、鍵そうだらけなのが大島ですね。

トウシキ遊水場の上からの写真を見て、これは巨大なプールになっていたんだなということがよくわ借りました。だから波も穏やかだったんですね。

そして最後は高速艇に乗って帰りました。高速艇だと2時間でついてしまいました。

さるびあ丸もいいけれど、高速艇も早くて気楽に行けるのは素敵ですね。

1日目

マグマのしぶきが赤く錆びる!伊豆大島「赤禿」で見た火山誕生のドラマ

2日目

港もプールも火山のしわざ!伊豆大島を歩いてわかる噴火の歴史(伊豆大島)

伊豆大島は「これ描いて死ね」(作者 とよ田みのる)さんの舞台になっている島です。とよ田さん自身が、大島出身だとのこと。家に帰ってから読んでみたのですが、創作の苦しみについて描かれている本で、私も参考書を出版した時に自分で1〜10まで書いた原稿を持っていって、何度も断られたのを思い出してシンクロしました。とても良い本です。

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