「1996年vs2026年」動画に見る強烈な違和感と現実味・授業でICTを使いすぎないほうがいいと思う理由

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「1996年 vs 2026年」に衝撃を受けた、あるSNS動画の話

車の中で家族が窓の外を指さしながら盛り上がっている昭和の風景と、同じ車内で全員が無言のまま画面を見つめている令和の風景。この2枚が並んだ瞬間、思わず手が止まりました。今回は、あるSNS動画をきっかけに考えた「画面と向き合う時間」について、お伝えしたいと思います。

以下のポストをX(旧twitter)で発見しました。昭和と令和の比較です。おそらくAIが作った動画だと思いますし、令和に偏見のあるような側面(令和が白黒になっているなど)があって、かなり一方的な面があると思いつつも、多くの真実が含まれている動画だなと思って、衝撃を受けました。

いかがでしたか?この動画に写っている令和の姿は、決して悪者として描かれているわけではありません。スマホやパソコンのおかげで、私たちは昭和の時代には考えられなかったほど多くの情報にアクセスでき、遠く離れた人ともつながることができるようになりました。ただ、便利な道具を手に入れたからこそ、「目の前にいる人と、ちゃんと向き合う時間」を意識して選び取る必要が出てきたのかもしれません。この動画を見て感じたモヤモヤは、きっと多くの人が心のどこかで感じている感覚なのだと思います。皆さんは、この動画を見てどう感じましたか。

動画からかいつまんで紹介します。まず車の中での様子。昭和は、家族皆で景色を見ながら楽しそうに会話をしてドライブをしていますが、令和は皆画面を見ていて無言です。

カフェでの様子。カフェでは皆楽しそうにお話をする様子が昭和。令和では無言でパソコンと向き合っています。

次に旅行の様子かな?高い山の上でヤッホーみたいに叫んでいるのが昭和。令和は山の上でバエル写真をそれぞれが取り合っていて、SNSに投稿などをしています。

家庭でのリビングの過ごし方の様子。昭和ではおじいちゃんおばあちゃんを含めた一家団欒の様子が描かれていますが、令和では、核家族となり、個々人が画面に向かって過ごしています。

遊びの様子。昭和は公園で皆でボールを追っかけていますが、令和は公園でゲームの画面に向かって皆で集まって通信対戦のようなものをしています。

とまあ、こんな感じです。この動画、令和側があえて白黒で表現されているなど、演出面でかなり一方的な印象操作がされている部分もあります。実際には昭和にも孤独や息苦しさはありましたし、令和にもオンラインを通じて広がった新しいつながりの形があります。それでも、「同じ空間にいながら、それぞれが別の画面を見ている」という光景には、強い違和感と。、思わずドキッとさせられる真実味があるように感じました。

「同じ空間」にいても「同じ時間」を過ごせていない、という不思議

このドライブやカフェのシーンで起きていることを、少し科学的に見てみましょう。実は人間の脳は、本来「同時に2つのことに深く集中する」のがとても苦手です。会話をしながら画面の情報も処理しようとすると、脳内では絶えず注意の切り替え(タスクスイッチング)が起こっており、これには小さなエネルギーコストがかかることが知られています。つまり、同じ部屋に何人いても、それぞれが画面という「別世界」に注意を向けている状態は、脳にとっては「一緒にいるようで、一緒にいない」状態に近いのです。物理的な距離の近さと、心理的なつながりの深さは、必ずしもイコールではないということが、この動画からも読み取れます。

なぜ私たちは、目の前に家族や友人がいても、つい画面に目をやってしまうのでしょうか。ここには、脳内物質であるドーパミンが関係していると考えられています。ドーパミンは「快感を得たとき」だけでなく、「これから良いことが起きるかもしれない」という期待の場面でも分泌されることが知られています。SNSの通知や新着メッセージは、「開けてみるまで中身がわからない」という点で、まさにこの「期待」を刺激する仕組みになっています。目の前の景色や会話は、次に何が起こるか予測がついてしまいますが、スマホの画面の向こうには常に「まだ見ぬ新しい情報」がある。この違いが、無意識のうちに私たちの視線を画面に引き寄せてしまう一因だと言われています。

「非日常」の記録が「今この瞬間」を奪ってしまう皮肉

山の上でバエる写真を撮り合う令和の旅行シーンも、興味深いポイントです。せっかく絶景の前に立っているのに、その景色を「味わう」時間よりも、「記録する」「共有する」時間の方が長くなってしまう。これは、旅先の思い出を写真という形で残せるという便利さの裏側にある、ちょっと皮肉な現象だと言えます。心理学の分野では、写真を撮ることに意識が向きすぎると、その場の体験そのものへの記憶が逆に薄くなってしまう可能性があるという指摘もあります。せっかくの「ヤッホー」と叫べる瞬間が、「いいね」の数を気にする時間に置き換わってしまっているのだとしたら、少しもったいない気もしますね。

授業でパソコンを使いすぎることについて、私が思うこと

こうした変化は、学校の授業にも無関係ではないと感じています。近年、授業でパソコンやタブレットを使う場面が増えていますが、私自身は、理科の授業においては画面に向かう時間をできるだけ絞りたい、対面している生徒と一緒に感動したり、手を動かして実験をしたいと考えています。

以前Jambordというアプリで植物の分類をやらせていたことがありますが、今はカードに戻しています。

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理由は、この動画が示している問題と根本的には同じです。実験で起きた反応を自分の目で観察したり、友達と顔を合わせて「なぜだろう」と話し合ったりする時間は、画面越しの情報収集では得られない体験だからです。もちろんパソコンは調べ物や資料作成には便利な道具ですし、うまく使えば学びを助けてくれます。しかし、便利さゆえについ使いすぎてしまうと、目の前の実験や仲間との対話という、本来最も学びの多い時間が、画面に奪われてしまう危険性があると感じています。道具として賢く使うことと、道具に時間を明け渡してしまうことの境界線を、私たち大人も含めて、もう一度考え直す必要があるのではないでしょうか。

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