台車が語る運動の物語:記録タイマーで可視化する物理実験(記録テープ・記録タイマー)
廊下を使って!記録タイマーと力学台車で「運動」を体感する実験
「記録タイマーと力学台車」を使った運動の測定実験。物理分野の授業で定番のこの実験ですが、教室で行おうとすると、意外とスペースに悩まされることはありませんか?今回、教室内の混雑や安全面の不安を解消するために、思い切って廊下で実施してみました。結果として、実験効率も安全性もアップ!しかも生徒たちの理解もぐっと深まりました。
使用する道具と注意点
まず、使用する記録テープには2種類あるのでご注意を。学校で使用しているのは α型(カタログナンバー C15-1703-01) です。もう一つの「g型」とは長さや打点間隔が異なるため、実験計画時には間違えないようにしましょう。
その他に用意したものは以下の通り:
• 記録タイマー(電源と打点紙の接続を忘れずに)
• 力学台車
• 傾斜をつけるための板
• セロテープ(記録紙を固定するのに便利)
• 重り(斜面の角度や質量の違いを体験させるのも◎)
• 廊下に敷くための養生シート or 板(今回は板を使用)
実験セッティングと進行方法
今回の構成は以下の通り:
• 廊下に板を8枚並べ、その上で台車を走らせます。
• 1枚は教室内に設置。計9班でちょうどよく割り振ることができました。
• 廊下をしっかり確保することで、各班が安全に、かつじっくり観察できる環境に。
教室では台車が途中で机にぶつかったり、記録紙が引っかかったりとトラブルが起きやすかったのですが、廊下ではその心配もありませんでした。
生徒たちの反応と観察ポイント
廊下に並んだ実験装置に生徒たちは興味津々。記録タイマーから出る「カタカタ…」という音に集中しながら、台車の加速の様子を打点で記録していきます。中には「記録紙の間隔が広くなってる!」と自ら変化に気づき、加速度の存在を実感している様子も。
また、斜面に置いた台車にどんな力がはたらいているのかを考察する場面では、
• 「重力成分が台車を引っ張ってる」
• 「摩擦が少ないとスムーズに動く」
といった意見が活発に出ていました。
手で記録をとるものについては、各自一つずつ、水平面、斜面、自由落下については、班で1つずつとって、データを共有して解析を行いました。
傾きの大きな斜面
落下運動
水平面

こちらは、緩やかな斜面での解析の様子です。難しいのが早さの点をどこにプロットするのかということですが、メモリの間にうっていくことが大切です。また原点を通る必要はありません(うまく実験をやると通ることがあります)。したのグラフでは生徒が一度間違ってしまったったため、グラフを作り直して赤で引いてあります。
また位置のグラフについては解析したところをスタートとするため、0を必ず通ります。
こちらはその解析の様子です。はじめのところで切り落としたことによって、距離のところがずれてしまっています。

こちらは水平面でのデータです。台車の性能によって、ずいぶん速度が落ちてしまうものがありました。メンテナンスや買い直しが必要かも?

こちらが斜面上の台車の運動の様子です。かなりきれいな傾向がみられました。
二次関数かどうかを考えさせるためにも、時間を2乗にしてグラフを書き直してみると面白いかもしれないなと思っています。
• 廊下での実施は、物理実験の空間的な制約をクリアする手段として有効。
• 安全面の配慮(滑り止め・静電気・周囲への声かけ)をしておけば、意外とスムーズに運用できる。
• 生徒同士での観察共有も促進され、学び合いの姿も自然と生まれる印象がありました。
「場所を変えるだけでここまで変わるか!」というのが今回の最大の学びでした。理科室が手狭な場合や、安全に配慮したいときなど、廊下活用という選択肢を一度検討してみてはいかがでしょうか?
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