自己誘導の実験で観察!電流は「ためらう」?コイルが見せる0.0005秒の物語
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
スイッチを入れた瞬間、回路には電流がスーッと流れ始める。そう思っていませんか?実はそんな単純な話ではありません。回路の中に「コイル」が一つ入っているだけで、電流は素直に流れてくれず、まるでブレーキをかけられたかのようにゆっくりと立ち上がっていくのです。今回は、ナリカで購入したEasySense(DataHarvest社)というセンサーを使って、この不思議な現象「自己誘導」の瞬間を実際にとらえてみました。

まずはこちらの動画をご覧ください。
自己誘導とは何か―コイルが見せる「電流のためらい」
コイルに電流を流そうとすると、コイル自身が変化を嫌うかのように、電流の変化を妨げる向きに誘導起電力を生み出します。これが自己誘導と呼ばれる現象です。以前ご紹介した電気振動と同様に、この現象もごく瞬間的に起こるため、人の目や一般的な電流計ではとても追いきれません。そこで今回は、高速でデータを取得できるセンサーの出番です。
0.0005秒を逃さない―EasySenseのセッティング
今回使用したEasySenseでは、測定時間を200ミリ秒、サンプリング間隔を2000回/秒に設定しました。つまり1秒間になんと2000回ものデータを取得できる計算です。これだけ細かく区切ってデータを取れば、人の目には一瞬にしか見えない「電流の立ち上がり」も、なめらかな曲線としてグラフ上に再現することができます。

電圧計だけじゃない!電流計でも自己誘導は見える
先ほどの動画では電圧計を使って実験をご紹介しましたが、実は電流計でも同じように自己誘導の様子を観察することができます。今回使用したのは、プラスマイナス1A(アンペア)まで測定できる電流計です。

電流計を使う場合、注意したいポイントが一つあります。それは、電流計は回路に対して直列につなぐということです。電圧計は並列、電流計は直列。これは中学校の理科でもおなじみの基本ルールですが、実験のたびに「あれ、どっちだったかな」と確認したくなる、つまずきやすいポイントでもあります。

測定結果が語る、コイルの「足止め」の正体
さて、いよいよ測定結果です。グラフでは、青色がコイルなしの場合、赤色がコイルありの場合を示しています。コイルがない回路では、スイッチを入れた瞬間に電流がピタッと最大値まで到達します。ところがコイルを入れた回路では、電流がすっと流れ始めるのではなく、じわじわと時間をかけて少しずつ上昇していく様子がはっきりと記録されました。

実際の時間で言えば、ほんの一瞬の出来事です。けれども、それがこれほど美しい曲線として目に見える形で表れたことには、思わず感動してしまいました。普段は教科書の中の理屈でしかなかった現象が、グラフという「証拠」として目の前に現れる瞬間は、何度経験しても胸が高鳴ります。
なぜコイルは電流を「ためらわせる」のか
この現象の裏側にあるのが、レンツの法則です。コイルに流れる電流が変化しようとすると、コイルはその変化を打ち消す向きに自ら起電力を発生させます。いわば、急激な変化を嫌う「慣性」のような性質を、電気の世界でも持っているということです。
この性質は、決して実験室だけの話ではありません。私たちの身の回りにある変圧器やモーター、IH調理器、さらにはスマートフォンのワイヤレス充電まで、自己誘導や電磁誘導の仕組みは、現代の暮らしを支える縁の下の力持ちとして大活躍しています。小さなコイル一つが見せてくれる「ためらい」の正体を知ることで、電気という目に見えない存在が、少し身近に感じられるのではないでしょうか。
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!
NEW 分解問題集 理科
- 7月21日発売!『高校入試 分解問題集 理科』(学研)…難しい問題も小さな問題に分解することで、問題を解くことができます。そんな分解の技術が身につくように深く関わりを持って作りました。

7月のイチオシ実験!
夏でプシュッと爽やか実験!
テレビ番組監修・イベント等のお知らせ
- 7月18日(土)「TIF presents ONE SONG FES. 」(フジテレビ)
- 7月18日(土) 教員向け実験講習会「ナリカカサイエンスアカデミー」
- 7月23日(木)科学監修 19:00〜 THE突破ファイル(日本テレビ)
- 7月30日(水) 監修したテレビ番組放送予定
- 12月26日(土) ナリカサイエンスアカデミー(教員向け実験講習会)開催
書籍のお知らせ
- 『大人のための高校物理復習帳』(講談社)…一般向けに日常の物理について公式を元に紐解きました。特設サイトでは実験を多数紹介しています。※増刷がかかり6刷となりました(2026/02/01)

- 『きめる!共通テスト 物理基礎 改訂版』(学研)… 高校物理の参考書です。イラストを多くしてイメージが持てるように描きました。授業についていけない、物理が苦手、そんな生徒におすすめです。特設サイトはこちら。

各種SNS(更新情報をお届け!)
【日本語】X(Twitter)/instagram/Facebook 【英語】BlueSky/Threads
Explore
- 楽しい実験…お子さんと一緒に夢中になれるイチオシの科学実験を多数紹介しています。また、高校物理の理解を深めるための動画教材も用意しました。
- 理科の教材… 理科教師をバックアップ!授業の質を高め、準備を効率化するための選りすぐりの教材を紹介しています。
- Youtube…科学実験等の動画を配信しています。
- 科学ラジオ …科学トピックをほぼ毎日配信中!AI技術を駆使して作成した「耳で楽しむ科学」をお届けします。
- 講演 …全国各地で実験講習会・サイエンスショー等を行っています。
- About …「科学のネタ帳」のコンセプトや、運営者である桑子研のプロフィール・想いをまとめています。
- お問い合わせ …実験教室のご依頼、執筆・講演の相談、科学監修等はこちらのフォームからお寄せください。


