肺が動く瞬間を、指先で操作せよ! 「見る、動かす、考える」理科シミュレーションサイトの衝撃

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「見る、動かす、考える」―AIが生んだ理科シミュレーションサイトの衝撃

横隔膜って、実際どう動いているの?

「肺は自分でふくらんだり縮んだりしているわけではない」

そう聞いて、ピンとくる人はどれくらいいるでしょうか。実は肺には筋肉がなく、横隔膜という筋肉が上下することで、胸の中の空間(体積)が変化し、その結果として肺が受動的にふくらんだり縮んだりしているのです。

言葉で説明されてもなかなかイメージしづらいこの現象、もし自分の手で横隔膜を動かして、肺がどう反応するかを目で確かめられたら……そんな理想的な教材に、最近出会いました。

北海道北見市立常呂中学校の吉田彰歳先生がお作りになっている、理科シミュレーションサイトを触らせていただきました。

見る。動かす。考える。

URL:https://理科sim.jp/

こちらのサイトがとても素晴らしかったので紹介させてもらえますか?と聞いたところ、快くご許可いただきました。

呼吸のしくみを、指先で体感する

ちょうど私は今、中2の理科で呼吸について教えているところでした。授業では横隔膜と肺のふくらみ方について、模型を使って説明をしています。

「肺は自らふくらまない!?」ペットボトル模型で学ぶ呼吸のしくみ(横隔膜と肺)

模型でも十分に理解の助けになりますが、こちらのシミュレーション教材を実際に触ってみたところ、驚きの体験ができました。画面の中の横隔膜を自由に引っ張ると、それに連動して肺がリアルタイムでふくらんでいく様子が、直感的に理解できるのです。

さらに感心したのが、胸の中の圧力の変化まで視覚的に表してくれる仕組みがあったことです。横隔膜が下がると胸腔内の体積が広がり、その分だけ圧力が下がる(これがボイルの法則ですね)。すると外の空気より気圧が低くなり、空気が肺に流れ込んでくる。

この一連のつながりが、図とグラフのような形でひと目で伝わってくるのです。

「言葉」「図」「自分で動かす」

この3つがそろうと、理解の深さがまったく違ってくるのだと、あらためて実感しました。

驚きは115種類! すべて無料という太っ腹

このサイトのすごいところは、この呼吸のシミュレーションだけではありません。中学校理科を中心に、なんと115種類ものシミュレーションが公開されており、そのどれもが非常に完成度の高いものでした。

吉田先生にお話をうかがったところ、このサイトには次のような特徴があるとのことです。

すべて無料で、生徒・先生ともに自由に利用できる

生徒が自分で操作しながら、理科の現象を直感的に理解できる

現場の中学校理科教員が、AIを活用しながら作成している

特に印象に残ったのは、「先生が見せるだけでなく、生徒自身が触って、動かして、考える教材」として活用してほしい、という思いを込めて制作されたというお話です。一人の現場の先生が、これほどの数と質の教材を作り上げてしまったことに、本当に驚異を感じています。

実はこれ、AIを使って作られているんです

これだけの教材をどうやって作ったのだろうと気になっていたのですが、なんとAIを活用しながら制作されたとのことでした。

実は私自身も、日々の仕事を効率化するための小さなプログラムを、AIに手伝ってもらいながら作ることがよくあります(いわゆる「バイブコーディング」と呼ばれるものです)。プログラミングの専門知識がそこまで深くなくても、AIと対話しながら形にしていけるという点で、なるほど、と深くうなずいてしまいました。

ちょうど同じタイミングで、こんなニュースも飛び込んできました。Geminiにプロンプトを頼むだけで、操作できるコンテンツまで生成できるようになったというのです。

「Google Workspace」の「Gemini」が操作可能なコンテンツを使った回答を生成可能に(窓の杜)より引用

 具体的な利用例として、『DNAの3D構造がどのように機能するか教えて』と入力すると、3DのDNA構造をチャット上から回転やズームできるコンテンツを表示可能。また、振り子のエネルギーの推移を観察したり、対話型の表を通じてキャッシュバーンレートについて学ぶことも可能である。利用者は1つのプロンプトを入力するだけで、分子の回転から複雑な物理システム、資金の消費率のシミュレーションまで幅広い事象を視覚的に探求できる。

DNAの立体構造も、振り子の運動も。プロンプト一つで「触れる形」に変換できてしまう時代が、もうすぐそこまで来ているようです。プログラミングの幅がぐっと広がったことで、生徒に提示できる教材の可能性も大きく広がったなと、あらためて感じています。

「見る」だけだった理科の授業が、「動かす」「考える」を経て、生徒自身の手でつくり出す時代へ。この先どんな教材が生まれてくるのか、今からとても楽しみです。

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