力学台車を的にぶつけてみた!グラフが教えてくれる「速さの2乗」の秘密(運動エネルギーの実験)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「速さが2倍になると、ぶつかったときの衝撃は何倍になるでしょうか?」
車の事故のニュースで「スピードの出しすぎ」がよく問題になるのは、速さが少し増えるだけで、衝撃が想像以上に大きくなるからです。その秘密が、物理でおなじみの運動エネルギーにあります。
運動エネルギーは、どんな物理量とどのように関係しているのでしょうか。生徒に仮説を聞いたところ、「質量」と「速度」という言葉が出てきました。
この実験は、レールの上でビー玉を転がして的に当てる、小さな規模で行われることが多いものです。今回私が工夫したのは、1kgの力学台車を的に当てて、その的(箱)の動きから考える方法です。規模が大きくなる分、実験結果から考察しやすくなるという特徴があります。今回はこの実験を紹介したいと思います。
用意するもの

- 力学台車… 質量は1kgです。
- おもり(500g)×2… 今回は油粘土(500g)×2で代用しました。力学台車に1つ載せると1.5kg、2つ載せると2kgと、台車の質量を変化させられるのが特徴です。
- Beespi(ビースピ)…簡易速度計です。
- 竹定規
- 割り箸
- 記録タイマー
- マスキングテープ… 目印を机の上につけるために使用します。
- 的(箱)…お弁当パックに油粘土を適当に入れて作りました。身近なもので作れるのが嬉しいところです。
実験方法
1 力学台車に割り箸をマスキングテープで止めます。そして的を置いて、的に当てる直前にビースピを通して速度を測ります。

2 速度を色々と変化させながら(0.20から0.80m/sの間)、的にぶつけて、的がどの程度引きずられて動いたのかを記録します。



3 4つのデータが測定できたら、おもりを一つのせて1.5kgにして、同じように実験をします。終わったらおもりを2つ載せて2.0kgにして、実験をします。

結果① 速さと動いた距離の関係
実験結果を分析して、グラフにまとめていきます。ここで、どんな関数でフィットさせるのかについて、生徒の中でいろいろな迷いや思いが出てきます。ここが実験の一番おもしろいところです。
まずは速度と動いた距離のグラフです。縦軸に箱が動いた距離、横軸に速さを取ります。
生徒の仮説としては、一次関数が多かったようです。ところが、実際に1.0kg、1.5kg、2.0kgの3つのグラフを作ってみると、一次関数にはならず、クニュッと曲がるグラフができあがります。

曲がったグラフは、二次関数かもしれません。そこでさらに分析を進めます。これが二次関数なのかどうかを調べるために、横軸の速度を二乗してみます。縦軸に動いた距離、横軸に速度の二乗を取ると、速度の二乗に比例することがわかります。

結果② 質量と動いた距離の関係
次は質量です。質量については、同じ速さで比べる必要があります。ただし、ビースピを使って1.0kgも1.5kgも2.0kgも同じ速さにそろえるのは、ほとんど不可能です。そこで先ほどのグラフを使って、同じ速度の場所から、的が動いた距離を拾ってきます。
これをグラフ(縦軸に箱が動いた距離、横軸に質量)にすると、一次関数になるという結果が得られます。

まとめ 運動エネルギーの正体
この結果をまとめると、運動エネルギーは速度の2乗に比例し、質量に比例するということが考えられます。式で書くと、おなじみの「1/2 × m × v²」の姿が見えてきます。
ただし、係数の1/2については、この実験では議論できません。傾きから何とか考えようとしている生徒も見られたのですが、台車と箱(的)が合体する運動は力学的エネルギーが保存されないため、係数まではこの実験で決めることができないのです。
ここも大切な学びで、「この実験でわかること」と「わからないこと」を区別することは、科学的に考える上でとても大事な姿勢です。
この結果は、身近な場面にもつながっています。たとえば車のブレーキです。
速さが2倍になると、運動エネルギーは4倍になります。そのため、ブレーキをかけてから止まるまでの距離も、およそ4倍になります。時速30kmと時速60kmでは、止まるまでの距離が大きく違うのです。今回の実験で「速度の2乗に比例」というグラフを描いたことは、まさに交通安全の話にもつながっています。
グラフの見え方で考察が変わる
ちなみに、縦軸に的の動いた距離、横軸に速度を取ったグラフを見て、一次関数と考える生徒もいます。

質量の方についても同様です。2次関数かも?と考える生徒もいます。

データの取り方や範囲によっては、曲がっているグラフも直線のように見えてしまうことがあります。これをどう見るかが、考察に関わってくる良い例だと思います。
ただしこの実験の場合、台車を使ったダイナミックな実験にしているため、丁寧にやればかなりきれいなグラフが出てきます。こちらが導きたい考察まで、しっかりたどり着くことができます。ぜひ、身近な道具で試してみてください。
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