塩水をかけるだけで動く!マグネシウム燃料電池のふしぎな仕組み(燃料電池ミニバギー)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

本屋のレジ横で見つけた1000円の「発電するおもちゃ」

本屋をぶらぶらしていたら、レジ横のおもちゃコーナーで、思わず足が止まりました。値札には「1000円ちょっと」。それなのに、電池を入れる場所がどこにもありません。よく見ると「燃料電池で動く」と書いてあります。子供がまだ小さいので購入までは至らなかったのですが、これはなかなか面白そうな仕組みだと感じたので、今日はそのしくみをじっくり解説してみたいと思います。

燃料電池ミニバギー(Amazon)

マグネシウムと塩水と酸素で発電して、モーターで動く、燃料電池バギーカーです。

「燃料電池」と聞いて水素をイメージしていませんか?

「燃料電池」というと、水素と酸素を反応させて発電する、燃料電池自動車のようなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかしこのおもちゃは、燃料として使われているのが水素ではなく金属のマグネシウムだという点が特徴です。同じ「燃料電池」という名前でも、中身の仕組みが全く違うというのは、なかなか面白いポイントです。

金属が水に触れると電気が生まれる、その理由とは

こちらが公式サイトに載っていた説明文です。

金属が塩水などの水分にくっつくと、金属の表面では、電子と呼ばれる電気を伝える粒と、金属イオンの粒が発生します。この電子が電線の中を動くと、電流が流れます。マグネシウム燃料電池は、金属にマグネシウムを使い、活性炭素に含まれる酸素と塩水の力で、マグネシウムの表面を溶かすことによって、電子を発生させているのです。ここで、マグネシウムを使う理由は手軽に手に入れることができて、発電の効率がよいからです。

https://www.elekit.co.jp/special/2016summer/?page=fuelcell

この説明を、もう少し中学生にもわかりやすく分解してみましょう。

1. マグネシウムが塩水に溶け出す
マグネシウムは、水(特に塩水)に触れると、金属のままでいることができず、少しずつイオンになって溶け出していく性質があります。このとき、マグネシウム原子は電子を2個手放して、マグネシウムイオンへと変化します。

2. 手放された電子が電線を流れ出す
マグネシウムが手放した電子は、そのあたりをふらふらしているわけではなく、電線を通ってもう一方の電極(活性炭素)へと移動していきます。この電子の流れこそが、私たちが「電流」と呼んでいるものの正体です。つまりこのおもちゃは、マグネシウムが溶ける化学反応のエネルギーを、そのまま電気エネルギーに変換してモーターを回しているのです。

3. 活性炭素側では酸素が電子を受け取る
一方、もう片方の電極である活性炭素では、空気中の酸素が塩水に溶け込み、そこへ電線を渡ってきた電子を受け取っています。酸素が電子を受け取ることで水酸化物イオンが作られ、これがマグネシウムイオンと結びつくことで反応が完結します。

このように、マグネシウムが電子を渡す側(負極)活性炭素が電子を受け取る側(正極)という役割分担ができていて、電子が負極から正極へ流れ続ける限り、電気が発生し続けるというわけです。ちなみにこの反応は、鉄が水に濡れると錆びていくのと同じ「金属が酸化される」という現象の仲間です。錆びるという、ふだんは「困った現象」として扱われがちな化学反応が、実はこうしてモーターを回すエネルギー源として活躍しているというのは、なんとも面白い発見ですね。

なぜマグネシウムが選ばれているのか

マグネシウム燃料電池の材料にマグネシウムが選ばれているのには、いくつか理由があります。まず、マグネシウムは地球上に非常に豊富に存在する金属で、海水の中にもたくさん溶けているため、比較的安く手に入れることができます。さらに、マグネシウムはイオンになりやすい、つまり電子を手放しやすい性質を持つ金属であるため、発電の効率が良いという特徴もあります。もし仮に、金や銀のようなイオンになりにくい金属を使ったら、電子をなかなか手放してくれないため、うまく発電できません。「反応しやすい」という、一見ネガティブに聞こえる性質が、実はエネルギー源としては大きな武器になるというのは、化学の面白いところです。

塩水を使うだけで動く、身近な理科教材

このおもちゃのすごいところは、電池を交換する必要がなく、マグネシウム板に塩水をかけるだけで発電が始まり、モーターが回り出すという手軽さです。使い終わったマグネシウム板は溶けてなくなってしまいますが、新しいマグネシウム板と交換すれば、また繰り返し遊ぶことができます。乾電池のように化学薬品がぎっしり詰まっているわけでもなく、身近な塩水と金属だけで電気を生み出せるというのは、ご家庭でも安全に楽しめる理科の実験教材として、とても優れた教材だと感じます。

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