サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
みなさんは今、とてつもない圧力に耐えていることをご存知でしょうか?それは、目には見えないけれど、常に私たちを押し続けている「大気圧」です。「気圧」というと、天気予報で聞く言葉、くらいに思っている人がほとんどかもしれません。しかし、その圧力の正体を知ると、きっと驚くはずです。
もし、牛乳パックを1本手に取ってみてください。ずっしりとした重みを感じますよね。実は、普段私たちが何気なく過ごしているこの空間では、あなたの手のひら1平方センチメートルあたりに、この牛乳パック1本分の重さが常にかかっているのです。
今回は、この驚くべき「気圧」の大きさと、水圧との関係について、身近な例えを交えながら掘り下げていきましょう。ぼくが中学生のときは、中学校ではg重という単位を使っていました。g重はわかりやすい単位で、地球に住んでいる上ではg重の単位のほうがイメージしやすいですね。
地上気圧は約1000[hPa]=100000[N/m^2](=10万[N/m2])です。これは1[m2]あたり、10万[N]の力でおされているということですが、単位が大きすぎて実感として湧きにくいですよね。そこでもう少しわかりやすく表してみましょう。
例えば1[kg]の物体の重力は質量×重力加速度(W=mg)で、1[kg]×9.8[m/s2]=9.8[N]=およそ10[N]です。これはg重を使うと、1[kg重]です。ちょうど牛乳パック1本をもったときの感覚が1[kg重]の力の感覚となります。
このことから地上気圧(1気圧)では、1[m2]あたり1[万本]の牛乳パックがあるというイメージです。すごい大きさだなということはわかりますが、まだわかりにくいので、これを1[cm2]あたりにしてみましょう。1[m2]は100[cm]×100[cm]なので、10000[cm2]ですから、1[cm2]あたり、牛乳パック1[本]に相当します。
つまりg重を使うと、1気圧はおよそ1kg[重/cm^2]なので、例えばぼくの人差し指の爪の面積はだいたい1[cm2]なので、人差し指の爪を押している力は1[kg]の物体に働く重力と同じくらい(牛乳パックが1本のかっているようなイメージ)となります。またぼくの手のひらは120[cm2]くらいなので、この手のひらにはたらく気圧は、およそ120[kg重](牛乳パック120[本])です。大気圧の大きさが実感できて、g重はわかりやすくて便利ですね。
成人男性の表面積はざっくりと2[m2]ときいたことがあります。片面だと1[m2]なので、寝転がると、その上には10000[本]の牛乳パックということになりますね。
このような大きな圧力が加わっているにもかからず体がつぶれないのは、体の裏側の面からも同じ大きさの気圧をうけているためです。普段、気圧には気が付きにくいですが、身近な物理現象に関係する大切な物理量です。
このような喩え話は『これが物理学だ!』にもよく登場してきます。おすすめですので読んでみると良いかなと思います。なお、別件ですが、今の中学生は地球以外でも使えるN単位で勉強をしているので、1kgの物体をもったときに感じる力は9.8N、およそ10Nであり、質量100gの物体にはたらく重力がおよそ1Nとおぼえておくと感覚的に良いと思います。
水圧について
なお水圧については、次のような式から計算できます。導き方については、下記の動画をご覧ください。
P = P0 + ρhg
水圧(Pa)=地上気圧(約1000hPa)×水の密度(約1000kg/m3)×深さ(m)×重力加速度(9.8m/s2)
水圧のすごいところは、たった10mもぐるだけで、地上気圧の2倍の大きさになる(約2000hPa)ということですね。2気圧となります。
例えば上の「これが物理学だ!」には次のような記述があります。
水深10メートルの位置にある潜水艦について考えてみよう。艦内の空気圧を一気圧と仮定する。静水圧( 潜水艦の外と中の圧力差に相当する) は一平方メートル当たり約一万キログラム、つまり10トンだから、超小型の潜水艦がたった10メートル潜るにもかなりの強度が必要になる
私たちは地上気圧はあまり日常で感じないので、地上気圧のとの差をとってみると感覚として捉えやすいですよね。水深10mで1気圧分がさらによけいにかかるということになります。
参考
テレビ番組「沸騰ワード10」(日本テレビ)にて、水圧に関する科学監修を行いました。
大人の平均的な表面積1.62m2に、水深20mの3気圧(10000×3N/m2)をかけて48600kg重というような計算をして出したものです。
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