サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
はく検電気がどんな仕組みなのか、目に見えない電気の動きを想像することが大切な実験ですが、これがなかなか難しいですよね。静電気は、小学校でセーターを脱ぐときにパチパチしたり、下敷きで髪の毛を逆立てたりと、誰もが一度は経験したことのある身近な現象です。しかし、それがなぜ起こるのか、電気の正体である「電子」がどう動いているのか、目に見えないからこそ、頭の中で正確にイメージするのは至難の業。
まるで、透明なインクで書かれた文字を読み解くようなものかもしれません。
でも、ご安心ください。今回は、その見えない電子の動きを丁寧に追いかけながら、高校物理でも重要な**「静電誘導」と「接地」**という現象の仕組みを、一問一答形式で解き明かしていきます。この実験を完全にマスターすれば、電気分野の理解がグッと深まること間違いなしです!さあ、一緒に電気の謎に挑戦してみましょう。
問題
次の図のように正に帯電したガラス棒を箔検電器の金属板に近づけると電子が移動をして箔がひらいた(②)。この状態で円盤に指を触れると箔が閉じた(③)。そして指を円盤から放してから(④)、ガラス棒を遠ざけると(⑤)、箔は開いた状態になった。この状態になる過程の電子の状態を考えて、図③〜⑤に電子の様子をかきなさい。
解答・解説
円盤や箔の中には、電流を流すことができる**「自由電子」がたくさんあります。自由電子は金属内を動き回ることができますが、①の図のように全体でみるとその分布に偏りはなく、電気的に中性(電気量ゼロ)**になっています。①ではわかりやすいように箔の中にある自由電子の様子が描かれています。ここに正に帯電したガラス棒を近づけると、ガラス棒のプラスの電気に引き寄せられ、円盤や箔にあった自由電子が上へ移動します。これが①から②の様子です。
この結果、電子が上部に移動したことで、箔は相対的にプラス(正)に帯電し、お互いに反発し合って開きます。この装置が「検電器」という名前なのはこのためで、物体を円盤に近づけるだけで、その物体が電気を帯びているかどうかが、箔が開くかどうかでわかるのです。
箔が開いている状態は、重力に逆らって静電気力でつり合っているため、不安定な状態です。ここで円盤に指を触れると、何が起こるでしょうか?人間の体も導体(電気を流す物質)なので、地球と同じように膨大な数の自由電子を持っています。箔検電器の箔はプラスに帯電しているため、指から自由電子が引き寄せられて金属板へ流れ込み、箔の電気的な偏りがなくなり中性に戻ります。
その結果、箔は反発力を失い、重力で閉じます。これが**「接地」**という現象です。図③の電子の様子は次のようになります。
次に、④のように指を離しても、③の状態で箔検電器は全体として中性になっているため、特に何も起こりません。箔は閉じたままです。図④の答えは次のようになります。
最後に、⑤のようにガラス棒を遠ざけると、どうなるでしょうか?今までガラス棒のプラスの電気に引き寄せられて円盤の上部に集まっていた電子が解放されます。行き場を失った電子は、箔検電器全体に散らばります。
その結果、箔は全体としてマイナス(負)に帯電し、お互いに反発し合って再び開きます。図⑤の電子の様子は次のようになります。
静電気は目には見えませんが、このように自由電子の移動を考えながら、現象を論理的に見ていくことが大切です。物理の現象は、必ず原因と結果でつながっています。今回の実験で、その面白さが少しでも伝われば幸いです。
こちらの実験もぜひ参考にしてください。
1章 静電気と電場・電位・静電気 ・箔検電器 ・電場 ・電位 |
![]() 身近にあふれる不思議な電気の力!今回は静電気について見ていきましょう。 |
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